□酔人―ヨイヒト―(近土)
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「しかし、何で俺ぁ女にもてねぇのかね…」

この酒の席での近藤の一言がきっかけ…

「近藤さんはいい男だよっ。この世には見る目のねえ女が多すぎんのさ。」
「そうですぜ、気ぃおとすこたぁないですよ」
近藤の猪口にとっくりを傾けつつ土方が励ませば、ビールを瓶ごと傾けてぐいぐい飲んでいた沖田がどんと空の瓶を置いて、そうつけ加えた。

近藤も土方もかなり酒が入っているようで、ただ一人次々と空瓶を生産しつつ沖田がそれをしれっと眺めている構図。
困るなあ、このおっさんどもは、つぶれられるとめんどくせぇや、と一人ごちる。

「おまえらのよーなモテる奴にはわからねぇんだよ、この苦しみはよぉ」
ぐっと酒を飲み干してそう吐き出す。

今夜の局長は酒に飲まれ気味だな、と横目に見つつ沖田は四本目の一升瓶を開けた。
「おい、総悟、あんまりチャンポンで飲むんじゃねぇ、悪酔いすんゾ、コラ」

「平気ですよ、そーゆう土方さんこそ真っ赤ですぜ」
「バッカ、おめーオレァ平気だよ」

近藤の愚痴にややひきつつ、土方がこちらに話を振ってきた。
お前も近藤さんをなだめろ、ということなのだろうが、面倒だなと適当に流す。

「へいへい、」
この適当な返事に、なぜだか引継ぎを完了したつもりなのか土方が立ち上がる。
「どこ行くんだぁ?トシィっ?」
「厠だよ、すぐ戻るから。」

たのんだぞ、と沖田に視線で促してふすまをぴしりと閉めた。
まあ、あれだけ飲めば、というところか。
からむ相手を失って、手酌で飲み始めた近藤の手からとっくりと取って、ついでやりつつ沖田には妙案があった。

「ところで近藤さん、もてるコツ…お教えしましょうか?」
「何?…本当か総悟?」
ええ、と二コリとして、沖田が言い放つ。

「イチモツと、テクでさぁ」

「………いや、随分と直だな…オイ…女性ってのは、こーロマンティックなのを求めてるんじゃあ…」
引きつった笑いを浮かべる近藤に平然として沖田はぐっとグラスをあけた。

「まあ、ある程度の器量ってーんは必要か知れやせんがねィ、人の好みなんざぁそれぞれですし、近藤さんは決して不細工じゃねぇからイケやすぜ」

「…そっそうか…?」

「へぇ、…と、いうわけで、ちょいとブツを拝借…」

と、股間に手を伸ばしそれをむずっと掴んだ。
「!!?そっ総…!!」
慌てる近藤のそれから手を放して空中で、わきわきと手を動かす。
「……こりゃあ、ご立派で…」

たんたんとそう言う総悟から後ずさって近藤は明らかに面食らった様子だ。
「お前、一体何を…!?」
「そんだけのもん使わなきゃあもったいねえや、実践と行きやしょうぜ」
「なんだ、遊郭でも行くのか?しかし、俺にはお妙サンが…」
心に決めた女がいるのだとぼやく近藤に、ははっと沖田が笑う。

「やらせてもくれねえ女に操だてたぁ、生娘でもあるまいし、流行やせんぜ。」

「いや、でもなぁ」
「どうしても惚れた女に悪いてんならいい手がありやす、やってみませんかぃ?オチねぇやつぁいねえこの俺のテクを完全レクチャーして差しあげまさぁ」
「総悟師匠っっ!!」
にやりと笑う沖田の背後に後光を見てがばっと総悟に抱きつく、近藤に局長の威厳という言葉は無かった。
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