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□距離感(銀土)
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「何でお前は…俺と寝んの…」
日が落ち始める夕暮れ…
室内に差し込む西日は部屋の中をオレンジ色に染めて…
同じ色に光る少し汗ばんだ額に張り付く銀の髪をかきあげて、隣に横たわる人影を見やることもしないでそう呟いた。
むしろそれは独白に近くて、返答を求めたようにはおよそ聞こえなかったから、その人型がそれに答えることが無かったのもごく自然なことかもしれない。
身じろぎもしない、返答もない、まるで銀時の呟きなど耳にも入らなかったように無反応のその男が、眠っていないことだけは気配で解かる。
「……いいんだけどさ、俺は…」
こんなのも悪くない…
俺は、いいんだけれど…お前は…
無言のままムクリと上半身だけ置きあがった影は、ちょうど銀時と西日をさえぎって…
身体の輪郭をオレンジ色の光に縁取られて…それは少し幻想的で…
しばし見つめた、
こちらには背を向けて、外の陽を見ているその姿を…
「土方……?」
「帰る。」
ふっと、落ち行く夕日から視線を外すと、ただ一言にそう言って、手を伸ばし脱ぎ捨てられたシャツを掴み引き寄せた。
「シャワーくれぇ浴びてけば…?」
「いい、帰ってから風呂入るから。」
端的にそう答えながらシャツに袖を通す土方を見上げつつ、ごろっと転がり、うつ伏せて肘で上半身を起こした。
「ふーん、ま、二回入るのもなんだしな。」
「あぁ…。」
向こうに帰ってから風呂に入らないのは、怪しまれるのだろう。
襟筋をぴっとひき、しわを伸ばして、細くて長い指がシャツのボタンを留めていく。
…さっきはアレを逆に外して…あらわになる白い肌に頬を寄せた…。
上着まで羽織って辺りを見回している。
「…あー、スカーフ?」
「…あぁ。」
「アレならソファんとこでとったじゃん。」
「あぁ、」
そういえば、という返事。
部屋を出て行く足音…
姿は見えているのに、足音だけ耳に響く。
起き上がって、着物を一枚、雑に羽織って…
帯も締めぬままに土方を追って部屋を出た、戸口からのぞけば、あたりまえだけれど土方がいて、スカーフを首にまわしていた。
なぜか、いない気がしてのぞいたけれど、当たり前にいて、緩慢にスカーフを締めるその姿を、戸口にもたれて見やる。