通常文
□「螺旋」
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風に身を預け、
カラカラ廻る
描く螺旋は永遠に
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「螺旋」
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紅色の風車が碧の河辺に一輪、花の様に咲いていた。
強く冷たい風が花弁を推すとカラカラ乾いた音で廻る。
廻り出来る螺旋は風が止まない限り永遠に続いて。
カラカラ
カラカラ
「銀時」
河辺の風車と寄り添い佇む銀色の男。
すう、と振り向けば黒い長髪が眼に留まる。眼に入れた漆黒は螺旋の紅を一掃させる。
風が止み、音が消えた。
永遠の螺旋が留まる。
「何をしている?こんな時分だ、風邪を引くぞ」
「・・・桂」
湿り気を帯びた地にぺたんと座り込んでいた銀時は、折り曲げていた腰を戻しながら自分に問い掛けた相手を見やる。
紅い螺旋を視界から外せば、そこは闇そのものだった。ただ目の前に映る長い漆黒だけが、見える。
以前にもこの色を見ていた。その時漆黒と共にあったのは、黒紅。
鮮明な赤が自分に付く。
時が経ち黒紅に変わる。
その上にまた、鮮明な赤。
繰り返し重なる紅色
その中にあの漆黒。
あの色だけは紅の中で一際眼に焼き付き残った。
それが今また蘇る。
時が廻れば全ては廻る。
止まる者は紅く染まった。
それでも自分は廻る。
カラカラ
カラカラ
「風車、見てたんだよ」
「滅多な事ではその色を見なかった奴がどうした」
漆黒が自分の目の前にまで近づく。
髪と同じ漆黒の瞳がすぐそこにあって。
魅入る。
完全に冷え、熱がなくなった頬に暖かい手の平が添えられる。
目の前にある漆黒の中に自分はどう映っているのだろうか。
ちゃんと其処に居るだろうか。
何もない白黒モノトーンに映ってしまってはいないだろうか。
黒紅が染み付いてしまっているのだろうか。
本当の時を廻り切れているだろうか。