通常文
□「過去刻」
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「・・・さん、銀さんッ!」
「・・・ん、・・・ぁ?・・・、何だ新八か」
「もう昼過ぎてますよ!あんたご飯くらい自分で作ったらどうなんですか!?」
眠気をふりはらいながら部屋にある唯一の時計を見ると、ただ今の時刻は眉間にしわを寄せて踏ん反り返っている奴が言った通りの時刻。
通常の人間なら昼飯を済ませ、お茶でも飲みながら雑談を交わしているような時間だった。
いつも昼夜関係なく活動しているため、銀時は時間の感覚がマヒしている様だった。
「それが一生懸命仕事してる上司に言う台詞か〜?」
のそりと布団から這い出て居間へと身を移す。
「あんた無職でしょ!!」
同時に、台所に居た新八が鋭いツッコミをぶつけてきた。
確かに「仕事」と言っても、ただ自宅でジャンプでも読みながら依頼を待っているだけなのだが。
「うゎー、新ちゃん、何?反抗期?」
「・・・」
からかい混じりにそう言うと、新八は無言で手にしていた出刃包丁を胸の高さで固定し、銀時に見える様に黒光りさせた。
「ッ!冗談ッ!すいません!!」
両手を挙げ降参のポーズをすると、奴はため息を吐いてまた台所の方へと体を向けた。
同じく、銀時も大きくため息を吐く。
「ぃゃー、俺が自炊しても良いんだけどさぁ、昔『お前の作るもんは食物じゃねぇ』って言われてんだよね」
「へぇ、銀さん作ったことあったんですか」
手を動かしながら言葉だけを向ける。
器用に動かされている新八の手は、機械の様に淡々と動かされていて、いかに奴が日頃使われているかが伺えた。
それを少々哀れに感じながらも話を続ける。
「当番制で仕方なく作ってやったのによぉ、そいつ食わなかったんだぜ。ヒドくねぇ?」
銀時は身を乗り出してその時の状況を説明した。
最後に一言、疑問の表情を浮かべながら言葉を付け足す。
「まぁその後他の奴らはなんか悪いもんにでも当たったのか寝込んだから奴が居て助かったけどな」
「・・・どんな料理作ってんですかアンタ・・・」
「ぇ、俺の所為!?俺はただ銀時丼を出しただけなんですけど!!?高杉・・・ぁ、いや、食べなかった奴は甘いもん死ぬ程苦手だったから食わなかっただけだしよぉ」
何の悪怯れもなく言う銀時を見ながらまた、ため息を吐いた。
"ため息を吐くと幸せが逃げる"とはよく言ったものだと、新八は胸の内で苦笑しながら。
そして銀時との会話は終わりがないと自ら悟り、「そうですか」と投げ遣りに相づちを打ち会話を終了させた。
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