通常文
□「過去喰」
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何故、人間の重大な三代欲求の一つを満たす「食事」を当番制にしてしまったのかを、そこに居た誰もが問いたくなった瞬間だった。
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「えーと、本日の食事当番は坂田殿であるそうです」
攘夷志士が隠れ潜むために置かれた拠点の自室。
ゴロゴロと束の間の休息をとっていた銀時に、最近この攘夷に参加し始めたばかりの、"平賀三郎"と言う男が報告をした。
確か機械を扱う、高杉の部下だったか。
「その"坂田殿"ってやめない?"銀時"で良いよ。」
顔を奴の方へ向け、怪訝そうな表情を向ける。
「し・・・しかし、攘夷志士を束ねる御方を呼び捨てなど・・・」
やはりこいつもその肩書きを言うのか、と少し消沈しながら銀時は重い体を起こし、目の前の机に上半身をダラリと置いた。
「テメェ早く飯作れっつーんだよ」
うなだれていると、平賀が居る障子の方から毒を吐く奴の声が聞こえた。
平賀の上司である、鬼兵隊隊長の高杉晋助だ。
「たっ、高杉隊長!!」
直ぐ隣まで来ていた事に気付かなかったのか、平賀は今までに無い程の声を上げた。
やはり上司と言っても、片や隊長・自分は新人なのだ、接点は無しに等しいのだろう。
その表情には憧れにも似たものを浮かべている。
「・・・あぁ、そうえば平賀が来たのって当番知らせる為だったっけ」
高杉の一言が無ければ忘れているところだったが、最初の目的は報告だったのだ。
銀時が思い出したように言うと、平賀は焦るように
「で、ではよろしくお願いします!」
と頭を下げ、高杉の居る方と逆の方向へ走り去っていった。
平賀が去った後、高杉は障子にもたれながら、
「・・・あいつ、向こうには廁しかねぇじゃねぇか」
さらりとボケをかました。
憧れの上司がこんな事を言っている姿を奴に見せてやりたいと、銀時は吹き出し、笑いながら思った。
「・・・?まぁ良い。それよか銀時、お前料理なんざ出来ねぇだろ」
ニヤリと口角を上げながら、高杉はこちらへ話題を移した。
笑っていた銀時の表情が一瞬ピクリと動く。
「やだなぁ高杉君!美食家の俺になんて事言っちゃってるのかな?作れるに決まってるだろう!」
言った銀時に高杉は
「あ・そ。じゃぁ今日は俺夕飯食わねぇから」
と捨て台詞を置いて、銀時の部屋から去っていった。
それを聞いた銀時は、高杉に絶対食わせてやる!と意気込み調理場へと向かって行った。
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