*灰かぶり*

□灰かぶり
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 灰かぶりは家に着くと、再びお母さんのお墓の木のところに行きました。

「小さな木さん、ゆらゆら、ゆさゆさ、体を揺すって!

ドレスをもとに戻しておくれ!」

 すると木は、再びドレスを取り上げました。灰かぶりは、もとの灰の服を着ました。
そして家に戻ると、顔をほこりだらけにして、灰の中に横になりました。

 次の朝、姉さんたちがやってきましたが、機嫌が悪い様子で口もききませんでした。
灰かぶりが言いました。「姉さんたち、昨夜は楽しかったのでしょうね」―「とんでもない。
お姫様がひとりやって来て、王子様はそのお姫様とばかり踊っていたのよ。
でも誰もそのお姫様を知らなくて、どこから来たのか、誰にも分からないの」
―「その方ってひょっとしたら、黒馬6頭立ての立派な馬車に乗ってた方?」と、灰かぶりは聞きました。
―「お前、どうしてそれを知っているの?」―「戸口に立っていたら、その方が通り過ぎていくのが見えたのよ」
―「これからは、仕事から離れるんじゃないよ」上の姉さんが怖い顔で灰かぶりを見ました。
「どうして戸口なんかに突っ立ってなきゃならないのさ」

 灰かぶりは、3度目もふたりの姉さんたちにおめかしをさせなければなりませんでした。
そしてご褒美に、姉さんたちはえんどう豆を一鉢、灰かぶりにくれました。
それをきれいに選り分けろ、と言うのです。「ずうずうしく仕事から離れるんじゃないよ」と、
上の姉さんはうしろからどなりさえしました。鳩達さえ来てくれたら、と灰かぶりは思いました。
そして心臓が少しどきどきしました。すると鳩達が前の晩のようにやってきて、言いました。
「灰かぶり、えんどう豆を選り分けてあげようか?」―「ええ

悪いお豆はおなかの中へ

良いお豆はお鍋の中へ」

 鳩達はまた、悪いお豆をついばんでよけ、間もなく片付けてしまいました。鳩達は言いました。
「灰かぶり、小さな木を揺すってごらん。もっときれいなドレスを落としてくれるよ。舞踏会にお行き。
でも真夜中までには帰るように気をつけるんだよ」灰かぶりは小さな木のところへ行きました。

「小さな木さん、ゆらゆら、ゆさゆさ、体を揺すって

素敵なドレスを落としておくれ」

 すると、この前よりずっと華やかで、ずっときらびやかなドレスが落ちてきました。
なにもかも金と宝石でできていました。金の飾り縫いのある靴下と金の靴もありました。
灰かぶりがそのドレスを着ると、真昼の太陽のようにきらきら輝きました。
玄関の前には6頭の白馬を引く馬車が止まっていました。馬達は丈の高い白い羽飾りを頭につけていました。
そして召使い達は赤と金の服を着ていました。
灰かぶりがお城に着くと、王子がもう階段で待っていて、灰かぶりを大広間に連れて行きました。
昨日、人々はこの姫の美しさに驚きましたが、今日はもっと驚きました。
姉さんたちは大広間の隅に立って、嫉妬のあまり青ざめていました。
もし姉さんたちが、その姫が家で灰まみれになっている灰かぶりだと知っていたなら、姉さんたちは妬ましさのあまり死んでいたでしょう。

 ところが王子は、この見知らぬ姫が誰なのか、どこから来て、どこへ帰るのか、知りたかったので、
家来達を通りに立たせ、よく見張っているように命じました。
そして灰かぶりがあまり速く走り去ることができないように、階段にタールを塗らせました。
灰かぶりは王子と踊りに踊って、楽しさのあまり真夜中までに帰らなければならいことを忘れていました。
突然、踊りの真っ最中に灰かぶりは鐘の音に気付きました。そして鳩達の忠告を思い出し、
驚いて急いで扉から出て、飛ぶように階段を駆け下りました。
ところが、階段にはタールが塗ってあったため、金の靴の片方がくっついてしまいました。
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