*灰かぶり*

□灰かぶり
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けれども恐ろしさのあまり灰かぶりは、その靴を持って行こうとは思いませんでした。
灰かぶりが階段の最後の段まで来た時、鐘が12回鳴り終えました。
すると馬車も馬も消え、灰かぶりは自分の灰まみれの服を着て、暗い通りに立っていました。
王子は灰かぶりの後を急いで追いました。階段のところで金の靴を見つけ、はがして拾い上げました。
けれども王子が下まで来ると、なにもかも消えてなくなっていました。見張りに立っていた家来達も、戻ってくると、何も見なかった、と言いました。

 灰かぶりは、それ以上ひどいことにならずにすんで良かった、と思いました。
そして家に帰ると、自分のほの暗い小さな石油ランプに火をつけ、煙突の中に吊るし、灰の中の横になりました。
まもなく、ふたりの姉さんたちも帰ってきて、「灰かぶり、起きて明かりを持ってきてちょうだい」と、大きな声で言いました。
灰かぶりはあくびをし、まるで起きたばかりのようなふりをしました。
けれども明かりを持っていくと、姉さんのひとりが話しているのが聞こえました。
「あのいまいましいお姫様は、誰だか分かったもんじゃないわ。くたばっちまえばいいのに。
王子様は、あのお姫様としか踊らなかった。そしてお姫様がいなくなると、王子はもうその場に
いる気がなくなって、舞踏会もおしまいになってしまった。」
―「まるで、ろうそくがみんな、一度に吹き消されたようだったわね」と、もうひとりの姉さんが言いました。
灰かぶりは、その見知らぬ姫が誰なのか知っていましたが、一言も言いませんでした。

 あれこれやったけどうまくいかなかった、けれどこの靴が花嫁探しの手助けをしてくれるだろう、
と王子は考えました。そして、この金の靴の合う者を妻にする、というおふれを出しました。
けれども誰が履いてもその靴はあまりに小さすぎました。

 とうとうふたりの姉さんたちにも靴をためす順番がやってきました。
ふたりは喜びました。なぜならふたりは小さな美しい足をしていたので、
王子様がやってきたら、きっとうまくいく、と思っていたのです。
「お聞き」お母さんがこっそり言いました。「ここにナイフがあるから、もし靴がどうしてもきつかったら、
足を少し切り落とすんだよ。少しは痛いだろうけど、そんなこと構うもんか。じきに良くなるさ。
そうすれば、お前達どちらかが女王様になるんだよ」そこで上の姉さんが自分の部屋へ行き、
ためしに靴を履いてみました。爪先は入るのですが、かかとが大きすぎました。
そこで姉さんはナイフを取り、かかとを少し切り落とし、そうして無理やり足を靴の中に押し込みました。
そうやって上の姉さんは王子の前に出ました。
姉さんの足が靴に納まっているのを見ると、王子は、この人が私の花嫁だと言って、馬車へ連れて行き、
一緒にお城へ向いました。ところが馬車がお城の門のところに来ると、門の上に鳩達が止まっていて、言いました。
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