小話駄文置き場3
□痛
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「見つけた…」
屋上庭園のベンチで眠っている幼なじみを見つけてホッと息を吐く。
メールをしても電話もしても返事が無く、寮まで行ったら、寮母からまだ帰って来ていないと聞いて慌てて学校まで戻ったのはつい先刻。
屋上庭園に向かった自分の勘の良さを褒めてやりたい。
と言うのは、まぁ、嘘で俺はこいつが屋上庭園に通っているのを知っていた…
「……」
俺が来たのにも気付かずくぅくぅと眠り続ける彼女の隣に座る。
何故…俺じゃないのか…
ずっと彼女を、彼女だけを見つめ続けていたのに…
彼女は―…
彼女は別の男に恋をした。
「…泣いたのか…?」
うっすらと彼女の目元に残る涙の痕。
俺だったらこんな風に彼女を泣かせたりしないのに。こんな風に辛い想いなどさせないのに…。
「何で…」
何で『アイツ』なんだよ…
アイツは、お前にこんなにも辛い想いをさせているのに…!
「…ぃ…く…」
「…!」
彼女の口から紡がれる他の男の名前。
「…なん…で…」
何で他の男何だろう。
何で俺ではないのだろう。
屋上庭園が闇に染まり始める。
こいつの好きな星が瞬き始める。
End