ワンピ長編夢V
□裏切りと壊れた心
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レオの謀反。
現守護戦士の反逆は、事の大きさ故に内密に処理される事に決まった。
真実は公には明るみにせず、レオにはある任務が命ぜられたのだ。
それは。
政府への出頭。
こじつけの様に疑惑がかけられた一族。その疑惑を晴らすため、レオがその身を捧げる事になった。
“名誉ある死”と一族内では伝えられるが、その裏は反逆者の処罰を上手く隠す盾にすぎない。
オオォ……
「御方様…。
ロゼです。私をお呼びでしょうか……」
「“おお…ロゼ…”」
龍の間。
ここは主に、守護戦士達や神殿内に仕える戦士達が、御方様に謁見するための大広間。
御方様に呼び付けられたロゼが、広間中央で頭を下げている。
「“構わん…
頭を上げよ…ロゼ…”」
「はい。」
「“…どうだ…
炎の守護戦士・レオは……見つかったか…?”」
「…いえ……。
脱獄して数時間…まだ見つかっておりません。しかし…ラーズが捜索に加わったので、…すぐに見つかるかと……。」
「“そうか……”」
「はい。」
重々しい空気。
謁見といっても、御方様との間には薄い幕で遮られている。姿は影しか分からない。
御方様は、脱獄したレオの行方が気になり、ロゼに説明を求めたのだ。
「御方様…」
「“…何だ……”」
「レオの…あの……」
「“………”」
「レオの命を…!
政府に…引き渡す事を…もう一度お考え直して頂く事は出来ないのでしょうか……!」
「“……”」
「行き過ぎた行動かも知れませんが……、レオは…彼なりに何かを……」
「“ロゼッ!!”」
ゴオォ…!
「“何度も言わすな…。
謀反は死罪なり。…そこに如何なる理由があれど、それは一族を滅亡させる危険な思想。”」
「……!……」
「“我が一族の誇りを捨て、己の正義だけを振りかざす様な戦士など…一族にはいらぬ。”」
「御方様…!!」
「“黙らぬか…ッ……!!せめてもの慈悲で…謀反の罪は伏せ、名誉の死を与えてやったのだ。これ以上、小僧に情けはいらぬ。分かったな……”」
「…………!
……出過ぎた真似を………お許し下さい……」
説得。
無理だと分かっていても、ロゼは御方様に話をしてみた。やはり、予想通りな結果だった。
ロゼは頭を深く下げ、御方様に詫びを入れる。
「“時に…ロゼ。”」
「……?」
「“お前の具合はどうだ?…何もないか…?”」
「…?…はい。」
「“使命の時は近い。
その時に支障が出ぬ様…鍛練を怠るな…”」
「…承知してます。」
ロゼの身を心配しているのだろうか。御方様は注意を促した後、そこから居なくなる。
薄い幕の向こう。
その気配がなくなり、ロゼは緊張を解いた。
「……………」
《私は……………
何をしてるの……?
本当にこれで…このままで…………》
ロゼは考える。
それは何の事だろう。
彼女にも、拭えぬ過去があるのだろうか。
すると。
背後から気配が。
ス……
「…!?」
「…あれあれ。」
「ラーズ…!」
「こんな所で。」
「レオは…!見つかった?乱暴な事はしなかったでしょう?」
「乱暴?はははは!
俺は何にもしてないよ。でもね…、相手はレオだからね。」
「ラーズ!」
「大丈夫だって。」
そこへ。
ラーズが来る。
レオ捜索に借り出されていた彼がいるという事は、レオが見つかったという事。
ロゼはレオの安否を聞くが、ラーズはいつもの様に軽く返事をする。
「御方様に…もう一度考え直して貰いたいとお願いしてみたけど無理だった。
ラーズ!あなたからも言って……」
「無理だって。」
「…!」
「知りたいか?」
「…何を。」
「何故レオが謀反を起こしたか…。」
「……!?」
「…な―んてね。
ロゼは知る必要なんてないさ。レオだって…こうなる事を分かって行動したんだ。男として、人としては尊敬するよ、俺も。」
「!…なら……」
「でも、戦士失格だ。」
「………」
「レオはね…、誰よりも優し過ぎたんだ。“主人”よりも自分の“正義”を守ろうとした。」
「…それは大事な事よ…。なのに…」
「滅多な事口にするなよ。龍の間で。」
「…………」
ラーズはロゼの言葉を遮った。心配そうなロゼとは反対に、ラーズは笑顔。
「それでレオは?
もう牢に…入れてしまったの………?」
「ああ…それがね。」
「どうしたの?」
「逃げた。」
「え…?」
「逃げられちゃったんだよね〜…ははは。」
さらりと。
全然反省していない態度で、ラーズは言う。
「逃げたって…!」
「まぁまぁ。」
「もっと慌てて!また大変な事にでもなったら…」
「大丈夫だって。」
妙に落ち着いているラーズが、やけに気になったロゼ。
「ラーズ……」
「逃げてもレオが行く場所は検討がつく。あちこち探す事はないさ。」
「……」
「レオはここに来る。
御方様にもう一度会いに来る気だ。政府に引き渡すのは明日の朝……今夜必ずレオは動く。」
「御方様…会ってくれるかしら……。」
「何言ってんだ。会えるわけないだろ?」
「え……」
「龍の間に来る前に…たぶんアイツに止められると思うんだよね―……。」
笑うラーズ。
だが。ラーズの読みは当たっていた。
レオは御方様に会おうと、今まさに龍の間を目指していたのだから。