ワンピ長編夢V

□動き出した闇の正義
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夜も更け。
辺りが暗くなる。
メリー号が停泊している岩場の海岸も、闇に包まれている。

その船内はやけに静か。
そして船の外。
そこにはルフィの姿。







  ヒュオオ――…


「……」
「…………」

「あと少しで時間だ。」
「……」




甲板。
ゾロ達が集まり、決闘の時間が来るのを待っている。全員が厳しい表情を浮かべている。

だが。
ティアラがいない。




「チョッパー…。
ティアラの様子見て来てくれよ。」

「また!
…ゾロ〜…今さっき行って来たばっかりだよ。」


「…そうだった…な。」
「ゾロが行きなよ。」

「……」
「…」




ティアラはまだキッチンに居るのだ。
様子が気になるゾロは、何度もチョッパーに偵察を頼んでいた様だ。

さすがにチョッパーも何度も行かされては困る。




「ティアラならリィと話してたぞ。」

「リィと?」

「うん。きっと…ウソップの事だよ。リィに事情を教えてるんじゃないかな。」


「そうか…。何度も悪かった。ありがとな。」

「うん。」




礼を言うゾロ。
リィを喚んでいるのなら、もう様子を見に行く事もないかと思った様だ。

そのキッチン内。
ティアラとリィが話をしている。





『…成程。
ルフィと狙撃手が…そんな事態になるとはな。』

「……」


『もう…その時間も近い。行かぬのか?…剣士等は外にいるのだろ。』

「…そう…ね……」


『……?』
「……」




リィの促しにも、動かないティアラ。
椅子に座り、ため息を何度もついている。




「……見たくない。」
『…?』


「…見たくない。
二人が…ルフィとウソップが闘う所なんか。」

『…ティアラ……』


「最後まで見ていられるか…そんな事…出来ない…!…見れない…私……!」

『…………』




ティアラには覚悟が出来なかった。ゾロ達に出来た覚悟が、ティアラには出来なかった。

見れない。
見ていられない。
ティアラは、だからここに居たのだった。

それを知ってか知らずか。ゾロ達は無理に連れて行く事はせずに、ティアラを残して甲板に出たのだ。





『…ティアラ。
誰もが辛い。それを見守るのも…、それを正面から受け止めるのも。』

「…分かってる。
私だけじゃない…ルフィも、皆も辛いって事。」


『……』
「痛い。」


『…ティアラ…』

「…痛いの…。
体の至る所が痛い…!
胸が苦しい……」




ティアラは自分を抱き締める。その様子に、リィは目を伏せた。




『案ずるな。
見れぬなら…ここに居ればいい。剣士等がしっかり見届けてくれよう。』

「………!」


『それでティアラの心が壊れぬのなら…それでいいんだ。』

「…ごめん…リィ………!…ありがと…」





リィの優しい言葉に、ティアラの気持ちが少し落ち着く。

ふと。
時計が目に入る。
時刻はあの時間。
ティアラの体が強ばる。と同時に、急にティアラが動いた。





   バッ…!


『ティアラ…!?』
「……!」




ティアラは小窓から、外を覗き込む。まだウソップの姿は無い。

また。
気持ちが騒ぎ出す。
心配、不安、悲しみ。





「リィ……!
もう…止められないの?
本当に駄目なの…!」

『………』


「…信じられない…!
こんな事……何故こんな事になるの……!…?」

『ティアラ…』




その場にしゃがみ込む。
膝を抱え、どうしようもない気持ちを声に出す。

ティアラの心は、だいぶ悲鳴を上げている様だ。
それを宥めるリィ。




『……』

《…事態は悪化……
こんなにティアラの心が乱されては…“呪いの血”の力に押されてしまう…………!……》




ティアラの闇。
心が乱れれば隙が出来る。リィは、その隙を狙われる事を恐れていたのだ。心配事は増えるばかり。

そして。
時間は約束の時をついに迎えるのだった。
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