文章置き場

□願〜negai〜
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<願い>



聖フェニックスは、いつものように森の中で一人で遊んでいた。
天使たちの希望から生まれ、新世界創造の使命をおびている彼だが、今はまだ幼く…毎日の何気ない一人遊びが、彼にとっては新鮮な冒険だった。森の中での遊びは、彼の日課である。

先ほど夕立があり、雨上がりを見上げると、空にはそれは立派な虹が輝いていた。
彼は何だか嬉しくなり、高台まで登り空に架かる七色の虹をじっと見つめた。かなり高いところに登ったのに、虹はさらに遠くに輝いている。あまりに遠く輝いているそれは、なんだか争いのない世界へ続いているような気がした。そして、もっと近くまで飛んでみようかと思って…彼は止めた。
「僕はとても弱いから、虹にたどりつく前に悪魔に襲われちゃうかもしれない。…」
ゼウスやカーンにいつも言われていた。【お前の命は自分だけのものではないのだ】と。

「神様、いつかあの虹の橋を渡れますように」
彼は祈った。






…………アンドロココは、巨舟の上に立ち尽くしていた。今、彼は幼い頃に憬れたあの虹の上に、いた。

遠く見えた久遠エリアが近づいてくる。この争いの旅ははいつまで続くのだろう。


次界に行けば、平和が訪れると信じていた。でも、それは幻だったのか。やっと辿り着いた次界は、新たな戦場でしかなかった。
それでも、彼は進んだ。仲間がいたから。力の無かった自分を助け、護ってくれた何ものにも替え難い仲間がいたから、彼らと共に聖魔和合の時代を迎えたいと、…そう願って。平和を願う心のまま、異聖神の根を破壊した。


ひたすら進んだ。そしてーーーー



彼の弱き心を支えてくれた、大切な神帝たちは、七色の光の粒となって。
……憧れだった、虹となって……!

「こんなことになるのなら、虹など願わなかった!!」
悔やんでも悔やみきれない思いが、彼の心を満たし,瞳から流れ落ちる。彼はがくりとひざをついた。

 だが、神帝たちは、彼の次界創造をを導くために七色の架け橋になったのだ。・・・彼らの思いを、命を無駄にしてはいけない。ここでいつまでも絶望に耽っている暇などない。いまの自分にはそんな資格はない。

溢れる想いを振り切り、彼は久遠エリアを目指す。もう、これ以上の悲しみはいらない。もう、誰の涙も血も見たくない・・・・。でも、私にそれが・・・・・・・・。






『僕は虹を渡るのが夢なんだ』

…想いの力によって命が生まれるこの世界で、あの時私はーー願ってしまった。


幼イコロ虹ヲ願ッタ。ソレハ私ノ罪デスカ…?


FIN.

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