文章置き場
□寂〜shizuka〜
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静かな木陰。切り株に腰をかけながら、二人は話をしていた。
「へえ、じゃ新河系から来たんだ?」
「はい。私と仲間の多くはつい最近転生したばかりで――、転生する前のこと、生まれ育った次界のことなどもおぼろ気にしか覚えていません」
GD牛若は話した。自分の最近の人生は、ダークマターによって奪われ、そこから自分はルーツとして転生したのだということ。アクア層まで行ったところで、ビッグポロロッガ現象に巻き込まれ、仲間とはぐれて気づいたら、この水仙域に居たこと。
「それでもはっきり覚えて居ることは――――、平和な『次界』を守りたい、ということ・・・」
そこまで言うと、金色の天使はほほ笑みながら言った。
「そっか。やっぱり君は『牛若』なんだね」
「!えっ?」
牛若はハッとした。そうだ、彼とは初めて会ったはずなのに、そんな気がしなかった!
「そ、そうだ!あなた一体誰なんですか?何で私の名を?」
「まあまあ、それはいいから」
「よくないです!」
けらけらと笑う金色の天使。邪悪な感じはしないが、このいろいろと変な一致は何だ!?
「どうぞ。」
そう言いながら、金色の天使は一杯のカップを差し出した。そこには実った稲穂のような色をした、輝く液体が入って居た。
「これはね、君の疑問の答え。僕や他の者じゃ飲めない。君にしか飲むことが出来ないものだよ」
――――これが答え??ー――――
戸惑いを隠せない牛若に、金色の天使は続けた。
「それは曾ての君のパートカラーだよ。そして味は、君自身の記憶の味。」
「記憶の・・・?」
牛若はこの話をなぜか理解して居る自分が不思議だった。こんな不思議な話が・・・・。
「だから、僕にはどんな味かわからない。君が曾ての君の思いと運命をどう感じ、どう受け止めるかで味が変わるんだ。」
牛若は魅入られたかのようにその液体を受け取った。
「君は言ったよね、転生したばかりで記憶がほとんどおぼろ気だと。
それをはっきりさせるのが、僕たちアーチ天使の役目。」
――――流転する時の中でやっと・・・・僕は、もう一度牛若(きみ)と出会いたい――――
牛若は、その液体を口にした。
「・・・あ・・・・・・・」