lichtschein‐光‐

□lichtschein《第一章》
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「こんにちは。ご見学ですか?」
近くにいた受け付けの女の人に声をかけられた。

「この中には魔物がいたんですが、入っても大丈夫なんですか?」
受け付けの人に聞いてみた。

「魔物…?魔物はいませんよ」
受け付けの人は困ったような顔をしている。

確認しようと急いで塔の中に入った。

中には武器や道具などの展示品が置かれてあり、人々が見て廻っている。

「いらっしゃいませ」
案内人と思われる男の人がいた。

「これは…!?どういうことですか!?」
驚きに声が出た。
以前来た時とはあまりにも変わりすぎていたからだ。

「ぼくは、ついこの前までこの塔の中の魔物と戦っていたのに」
思わず口にしてしまった。

案内人や周りの人達に変な目で見られた。

「何言ってるんだ?あいつは?」
「おかしな子ねぇ。大丈夫かしら?」
などという声がざわざわと聞こえてくる。

「お客様。この塔に魔物がいたのは、もう200年ぐらいはるか昔のことですよ」
案内人は笑顔だったが呆れているようだ。

「200年…!?200年と言ったんですか?」
衝撃のあまり聞き返した。

「はい。200年ですが。どうされたのですか?」
案内人が疑問の表情を浮かべる。

「200年…?ウソ…だろ…?」
信じられなかった。

それを見ていた人々は、怪訝な顔をしていた。

「…冗談…ですよね?」
驚きの表情のまま案内人に聞く。

「冗談を言っているのはお前だろ」
いきなり警備員の男が現われ、腕を捕まれた。

「はなして下さい!まだ話が…!」
すっかり変わってしまった周りの様子に納得できない。

「他のお客さんの迷惑だ。さあ帰った帰った」
警備員に塔の外へ追い出された。




塔の最上階まで辿り着いたら、急に光に包まれ、目が覚めたら異変が起こっていた。

塔の周りにあった森が町に変わり、魔物だらけだったはずの塔が観光の場所と化していた。


頭の中が混乱してしまい、何をどう整理したらいいのかわからない。


「200年…200もたったっていうのか…?」

不可解な出来事に、夢を見ているのではないかと疑う。

しかし、これが現実であるということを理解するしかないようだ…


(ぼくはどうして"ここ"に来てしまったんだ…?…どうして…?…)
何度も疑問を繰り返す…

今の現状を受け入れることができず、茫然と立ち尽くしていた…




――――




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