lichtschein‐光‐

□lichtschein《第二章》
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――3年前‐ラスレン20歳、シディエス24歳――


今日はヴィシャス国誕生の記念日。

朝から記念祭が開かれることになった。

王子モーリム。
兵士長ソルゴ。
第一部隊隊長ラスレン。
第二部隊隊長シディエス。

この代表四人を中心に、パレードを行なう予定だった。


だが、待ちきれない人々がぞろぞろと集まって城の前に群がっていた。

「シディエス様の美しいお姿を拝見できるチャンスだわ」
「ああ…シディエス様にこの花を渡したい」
「シディエス様〜早く出てきて〜」

シディエス目当ての女性達が、登場するのを今か今かと待ちわびている。


「…」
騒ぐ女性達の様子を上の階の窓から見ていたシディエスはため息を吐く。

「相変わらずファンが多いな。シディエス」
隣にいるラスレンがややからかうように話しかける。

「…うるさいだけだ」
シディエスは興味がなさそうに返した後、
「それに、お前を見るために来る者達もいるだろう」
シディエスはラスレンにも隠れファンがいるのを知っていた。

「それは、英雄の子孫の俺がパレードの前に出るからだろう」
ラスレン本人は、英雄の子孫だから目立つ存在なのだと思っている。

「わかってない、か…」
シディエスは小さく呟く。

「…?何がだ?」
ラスレンは、自分のことに関してはかなり鈍感だった。

「ラスレン兄さん。ここにいたのね」
少女の声が聞こえた。

いつの間にか二人の後ろにヴィリーが立っている。

「それはどうしたんだヴィリー?」
ラスレンはヴィリーの手に衣装があることに気付く。

「ふふっ。ラスレン兄さんにこれを着てほしくて持ってきちゃった」
ヴィリーは持っていた衣装をラスレンに渡す。

色は白で、貴族のような高貴さを感じる。

「もしかしてこの服、ヴィリーが選んだのか?」
ラスレンが尋ねた。

「うん。あなたなら似合うと思ったの。だってパレードの前に立つんでしょう。楽しみだわ」
ヴィリーはわくわくしているようだ。

「そうか。用意してくれてありがとう。ヴィリー」
ラスレンはヴィリーに微笑んで礼を言った。

ヴィリーの頬が赤く染まる。

「ヴィリー!なぜラスレンなんかと…?」
突然モーリムの声がした。
距離の離れた場所に、悔しそうな顔をしたモーリムがいる。

ズカズカと歩きだすモーリム。

「認めんぞ…!ヴィリーと婚約するのはこの私なのだからな…!」
モーリムが独り言を呟き、ラスレンとヴィリーに近づいていく。
…が。

「モーリム様!」
突然シディエスが出てきてモーリムの前まで小走りで来る。

「シディエス」
モーリムの足が止まる。

「パレードの準備を致しますのでお部屋へいらして下さい」
シディエスはモーリムの進行を阻止しようとした。

「しかし…」

「このパレードはモーリム様が中心です。皆が王子に注目しますので大変重要なことなのです」
シディエスはうまい言葉を使い、モーリムの気をラスレン達から逸らそうとした。

「おお。そうであった。早く支度をせねば!変な格好で出て民をがっかりさせてはならんな」
モーリムは自分が一番格好良く目立つことを望んでいるようだった。

モーリムは部屋へと歩きだした。


――――


パレード用の衣裳を来たモーリムが立っている。
相変わらず派手で、煌びやかな印象を強く受ける服装だ。

「モーリム様。お待たせしてしました」
ラスレンの声がモーリムの耳に聞こえた。

「遅いぞラスレン今まで……っ…!?」
振り向いたモーリムが、ラスレンの隣にいるヴィリーを見ると一瞬で目を奪われてしまった。

ヴィリーは、いつもと違ってフリルのついたドレスのような服を来ていた。

「お前っ!?その格好は?」
(な、なんて綺麗なんだ…)
モーリムは、いつもとは違うヴィリーの姿に動揺した。

「パレードですので正装してみました。どこか変な所がありましたか?」
ヴィリーは胸のリボンやスカートを整えたりした。

「いや、そうではないっ。さあ行くぞ!」
モーリムは自分の顔が赤くなるのを感じ、ヴィリーから目を逸らして歩きだした。



――――



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