lichtschein‐光‐

□lichtschein《第二章》
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パレードが終わった後…

ヴィリーはモーリムに呼ばれたので、指定された庭の裏にいた。

「おお!ヴィリー!」
後から来たモーリムが歓迎するような口調で話かけてくる。

「モーリム様。何の御用でしょうか?」
モーリムが苦手なヴィリーは、作り笑顔で答えた。

「お前と二人だけになりたいと思ってな」
モーリムは強い視線でヴィリーを見た。

「え…?」
ヴィリーに悪寒が走る。

「お前は私と婚約する運命にあるのだよ」
モーリムはヴィリーに怪しい目を向ける。

「私があなたと!?冗談はやめて下さい」
ヴィリーはモーリムに嫌悪感を表した。

「冗談ではない、本気だよヴィリー。私はずっと君を見ていたよ」
モーリムは笑みを浮かべながらヴィリーの腕を強くつかんだ。

「私はあなたと結婚する気はありません。」
ヴィリーはきっぱりと断るが、モーリムはまだ離さなかった。

「ヴィリーさん!」
カシルの声が聞こえてきたので振り向くと、こちらへ走ってくるのが見える。

「カシル!来ちゃだめ!」
ヴィリーはカシルを巻き込まないようにしようと思った。
しかし、カシルは足を止めず近くまで来た。

「なんだお前は?何しに来た?お前に用はないぞ。さっさと立ち去るがいい!」
モーリムはカシルを睨み、冷たく追い払う。

「…っ!」
カシルは威圧的なモーリムの態度に恐怖を感じたが、去ろうとはしなかった。

「聞こえなかったのか?今すぐ立ち去れと言っているだろう!」
モーリムは声を荒げる。

「カシル!私なら大丈夫だから…!」
ヴィリーは平気なフリをして、カシルをモーリムから逃がそうとした。

「…ヴィリーさんを…離して下さい…っ!」
カシルは勇気を出して口にした。

「黙れ!お前ごとき一般兵が私に指図するなど無礼であるぞ!」
モーリムの表情が怒りに変わる。

「カシル…!」
ヴィリーは驚きながらカシルを見ていた。
引っ込み思案なカシルがあのモーリムに立ち向かったからだ。

「ヴィリーさんを離して下さい!」
カシルは恐怖と戦いながら、再度モーリムに言い切った。

「黙れと言っているのがわからんのかっ!」
モーリムは怖い形相でカシルに怒鳴った。

「モーリム!何をやっているのだ?」
突然声が聞こえた。 
現れたのはネルス王だった。

「ち、父上!」
モーリムは慌ててヴィリーから離れる。

「カシル!」
王の近くにはシディエスもいた。

「兄さん…」
カシルはホッとした。

「シディエス。モーリムを呼んでこい」
ネルス王が命じた。

「かしこまりました」
返事の後、シディエスがモーリムの所へと歩き出す。

(くっ…今回は仕方ない…)
父である王が来たので、モーリムは渋々諦めた。

「何しに来たのだ?」
モーリムはバツが悪そうな態度でシディエスに話しだす。

「ヴィリーがなかなか戻ってこなかったので探しに来ました。王様がお呼びですよ」
シディエスは冷静に返した。

「そうか。では私は失礼しよう」
モーリムは逃げるようにして去っていった。

ーー

「大丈夫ですか?ヴィリーさん」
カシルは、ヴィリーに声をかける。

「ええ。ありがとうカシル。私のせいで巻き込んでしまったわね」
ヴィリーはカシルに感謝していた。

「い、いえ。ヴィリーさんが困っていたので、なんとかしなければと思っていましたから」
カシルは照れていた。

「…やはり、モーリム様がヴィリーに対して一方的に気持ちを押しつけたのだろう」
シディエスが、先程の状況を納得したかのように言う。

「ええっ?どうしてわかったんですか?」
ヴィリーが驚いて尋ねた。

「今までのモーリム様の態度を見ていればだいたい予想がつく。ヴィリーは気付かなかったのか?」
シディエスはヴィリーに聞き返す。

「はい。全くわかりませんでした。モーリム様は嫌いなタイプだったのであまり関わりたくなかったんですよ」
ヴィリーはあっさりと答えた。

「そうか」
シディエスは落ち着いて返す。

「さあ、みんなが待っていますね。早く戻りましょうか」
ヴィリーは気持ちを切りかえて歩きだした。

「カシル。お前はヴィリーを助けたのだな」
シディエスは、隣にいたカシルに穏やかな笑みを向ける。

「僕はまだまだだよ。王様が来て下さらなかったら、どうなっていたかわからないしね」
カシルは、もっと強くならなければと、あらためて思った。


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