lichtschein‐光‐

□lichtschein《第一章》
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次の日には噂が広がっていた。

カシルが、天才剣士として名高いシディエスの弟だという話題が中心だった。

カシルとエリレオが歩いていると。

「あっ、カシルだ!」
「お前、シディエス隊長の弟だったんだってな!」
見習い兵士たちがカシルに声をかけてくる。

「えっ!?こいつがシディエス隊長の!?ホントか!?」
「シディエス隊長の弟なら強いのか?」
全く知らない兵士たちまでカシルを見ていた。

「あの…え〜と…」
カシルは、注目を浴びて恥ずかしい気持ちになった。

「ケッ、シディエス隊長の弟だから、ちやほやされてるだけだろー」
「だよなー。兄が有名だといいよなー」
中にはカシルを妬む兵士たちも出てくる。

「天才で優秀な兄がいらっしゃるなら、何かといいじゃないか。なあカシルくん」
「せいぜい、カッコよくて強〜いお兄さまの後ろに隠れて一生守られてろよ」
更に、カシルに嫌味を言ってきた。

「やめて下さい!」
さすがに黙っていられなくなったのか、カシルが声を荒げた。

先程の兵士たちは、おとなしそうだと思っていたカシルが怒ったので目を見開いた。

「なぜカシルにそんなことを言うのでありますか!カシルは町を守ろうとする責任感で行動したのでありますよ!シディエス隊長がどうのこうのではないであります!」
更に、エリレオが強く言い切った。


そして――


エリレオとカシルは城の外を歩いていた。
空は晴れていて青空が広がっていた。

「ありがとうエリレオ。また助けられちゃったね」
カシルは、2度も助けてくれたエリレオに礼を言う。

「なに、お前が困った時は助けねばと思ってな」
エリレオは素直に答えた。

「僕は強くならなきゃ。兄さんのように強い剣士になりたい。それに…」
そこまで言って、カシルは空を見上げ、

(守りたい人がいるから…)
カシルは、ある人に密かな想いを寄せていた。
紫色の髪をした少女の姿を思い浮かべる。

「ん?どうしたカシル?」
エリレオは、カシルが途中で口を止めてしまったので不思議に思って尋ねる。

「強くなって、僕自身として認められたいと思ったんだ」
カシルは、兄シディエスの弟としての評価ではなく、自分の実力で評価されるようになろうという思いもあった。




――――




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