lichtschein‐光‐

□lichtschein《第三章》
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再び気が付いたときには、体の痛みが軽減していた。

「よかった。魔道師の回復魔法が効いたみたいだな」
紫の髪を一つに束ねた同じ年くらいの男が喜んでいた。

(この人が助けてくれたのかな?お礼を言わなきゃ)
カシルは、体の痛みはあるが、なんとか上半身を起こすことができた。

「久しぶりだな、カシル」
男が親しげに声をかけてきた。

「…!?僕のことを知っているんですか?」
知らない人に自分の名前を呼ばれたのでカシルは驚く。

「オレだよロルウェだよ。、昔一緒に遊んだだろう」
ロルウェと名乗った男は明るく話してくる。

「…ロルウェ…さん?」
名前を聞いても、カシルは、目の前にいる人が誰なのかわからない。

「どうしたんだカシル?」
男は表情を変えて尋ねる。

「…すみません。貴方のことは覚えていなくて…記憶がないんです」
カシルは申し訳なさそうに答えた。

「記憶がないだと?」
ロルウェは真剣な目付きでカシルを見た。

「はい。…僕は7年前くらいからそれ以前の記憶が全くありません。わかっていたのはカシルという自分の名前だけでした。どうしてなのか原因もわからないんです」
カシルは重い表情で話す。

その頃のことは、穴でも空いて抜けてしまったかのように何もなかった。

でも、この人は記憶がなくなる前の自分のことを知っている。

「教えて下さい…!僕のことを…!僕について知っていることを話していただけないでしょうか」
カシルは知りたくてたまらなかった。

今まで自分の過去を知る人は誰もいなかった。

「お前はもともと、オレたちの国アリストラ国の人間だった」
ロルウェはカシルを真っすぐ見て話はじめる。

「えっ!?」
カシルは驚きの声をあげた。

「…そしてお前は、アリストラ王国の王位継承者。カシル・ラツァオ・アリストラ王子なんだ」
更にロルウェの口から驚くべき真実が語られる。

「…!?」
あまりにも衝撃な事を聞いてしまったため言葉が出なかった。

王子…?
僕が…?
アリストラ国の…?

ロルウェはアリストラの王族のことや光の集団のことを話した。


「僕が!?そんなはず…っ!?」
カシルは混乱してしまっていた。

今まで自分は、兵士としての暮らしをしていた。

一人前の兵士になるために頑張っていた。

兄さんがいてエリレオがいて、ラスレン隊長もいた。

…それなのに…

本当の自分は王族で強大な闇の力を秘めていた…

カシルは、何かの間違いか夢を見ているのだと思いたかった。

「お前にとっては信じられない話かもしれないが、全て事実なんだ」
ロルウェは、カシルを落ち着かせるような口調で言った。


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