lichtschein‐光‐

□lichtschein《第三章》
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――ラシェルド――

あなたは今、どこにいるのでしょう?




ゆっくりと目を開けていく。


誰かの顔が写った。


茶色の髪と紅い瞳の少年。


「ラシェルド!」

目を覚ましたティゼアは急に体を起こし、目の前の少年を見た。

「ティゼア?」
目の前にいる少年はキシンだった。

ラシェルドがここにいるはずはない。

ラシェルドではなくキシンなのだ。


ティゼアは、幼い頃に生き別れた弟ラシェルドの闇の呪いを解くため、キシンと二人で旅をしていた。

今夜は山の中で野宿することになり、眠っていたところだった。


「キシン…?…驚かせてごめんなさい」
現実を確信したティゼアはキシンに謝る。

「謝ることないよ」
片言で短い言葉だが、キシンの口調は柔らかだった。

「キシン…」
キシンの優しさがティゼアには伝わっていた。

「そうだ…!ティゼア待ってて」
キシンは思いついたように立ち上がると、何かを探しに行ってしまった。



その間、ティゼアは考え事をしていた。


「キシンをラシェルドと重ねてしまうなんて…」

一度や二度ではない。

今に始まったことではなく、もっと前からだ。


キシンには弟ラシェルドの面影があった。


あの時、キシンがラシェルドに似ていると言われた時からは、より一層強くなった。


ティゼアがキシンを弟ラシェルドと重ねて見てしまうのには、理由があった。



――なぜなら――

14年前、
セレビナスが、ラシェルドから抜き取られた光の力を集め、球体に変化させた宝玉――

その宝玉を、天上人達の力で10年以上の歳月をかけて人物化させた。

――それがキシンだ。


キシンは失われたラシェルドの光の力そのものだった。
 
 
 
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