話
□ジュウイチ
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そう。
先生なんて呼ばれてたけど、
僕らはまだ16だった。
ピチピチじゃないですかぁ。
けどさぁ、なんか…
勝手にしょいこんで。
あまりにもまとわりついてしまって。
僕にはもう、人に渡さないようにすることしかできないんだ。
- clover - 〜幸せ。只、それだけを願って。〜<壱拾壱>
「…日…嗣…!!!」
とくん… とくん… とくん…
シジョウの体の中で、何かが訴えるように動く。
ザシュリ
避けきれなかった小刀の嵐が、シジョウの体を全方向から襲う。
「…ガッ…ハッ!!」
シジョウの口からは決して少量とは言えない血が伝う。
「「シジョウ〜!!」」
また2人の子供の叫び声が重なる。
しかし、2人も余裕の訳が無く。
「お前達、おれらのこと分かってやってのか??」
「あんまりなめんじゃねぇよ。」
敵の声がかかり、後ろから振りかぶってくる敵の刀をギリギリで避けて交わす。
「…ばっ、ばかやろー共!! てめぇの心配してからにしろ…!!」
シジョウは避けきれないものはあきらめて、攻撃の方法を考える。
人間、ある程度を越えてしまえば、我慢がきくというものだ。
しかし。運命はあまりに残酷だった。
「つ〜かま〜えたぁ〜♪」
「クソっ!!」
ざくりと右肩に刃物が食い込む。
(くっそ… 動きやがれ… 日嗣!!!)
(そのような言葉遣いはあまり好まんのだが…)
「?」
自分の思いに答えがあり、引き抜かれる痛みのなか、不思議な顔をしてしまった。
相手の顔にも疑問が広がる。
「…?」
いくら神とはいえ、まだ子供。そして、どんなに我慢がきくと言っても、それは我慢であって、痛くないわけではない。
なぜ肩を貫かれたあの痛みを無視できるのか。
「…なんだ…今のは…??」
そんなの、周りが聞きたいものだ。
(お前は本来あんな者に負ける器ではない。)
しかし声はお構いなしに先を続ける。
(お前は誇りを持て。)
「ほ…誇り…??」
(一族の誇りと、その跡取りとしての誇りだ。)
訳の分からないコトを言い出した多分自分の"従獣"に、シジョウはただただ困ってしまう。
「なんの誇りだってぇ??」
敵は一人じゃべるシジョウを薄気味悪そうに眺めた。
今思えば、ここがシジョウを倒せる最後の瞬間だったのかもしれない。