□ゴ
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「美砂都さま・・・大変美しゅうございます・・・!!」
「・・・ええほんとうに」
「素晴らしいですわ 美砂都さま!!」

貴族の屋敷から、女たちの声が漏れていた。

やっとの事で貴族のあつまりに参加する気になった当主様のお気を変えては大変と、

すべての下女たちが機嫌取りに必死だった。

その当主は女性というよりもまだ少女と言った方がしっくりくる顔立ちをしている。

機嫌取りだからと言って決して美砂都が美しくないわけじゃない。

つやのある髪を綺麗にながした髪型がとてもあっている。

しかし、死んだようなうつろな目が全てを死なせていた。

「榎澄・・・ 榎澄・・・」
「お召し替えが終わるまでおまちくださいましねぇ」

時折思い出したように言葉を零す有様は、その周りだけが只セピア色の写真のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて、みんな来たねぇ〜」

ナツキはちゃんと集合場所に来た。というより、

"落ちて"きた。いつも通り、時間ピッタリに落ちてくるのは凄い技だと思われる。

「それにしても、最近みんなの目が冷ややかに見えるんは・・・気のせいやないんやろうなぁ〜」

と言いながら。

まぁ、ナツキの事はさておき、アオイは昨日聞けなかった依頼主について聞くことにした。

「まぁ、まちぃや。歩きながら話さんと。まにあわへんかもしれへんし。」

ナツキの言葉のままに、3人の子供たちは歩き出す。

「先生〜」

しびれを切らしたようにシラが言う。

するとナツキはふぅと息を一筋流して話し始めた。

「よぉく聞きいや。 その一族はなぁ、結して人が多いわけではなかったが、
 その一族の排出する神は素晴らしい実力を持ってた。
 それは大戦中まっただ中の事やったから、そんな一族は大層優遇されたはずやねぇ。」
「・・・で、その弱小一族は上流貴族まで成り上がったわけか・・・」

ナツキの話の合間に、シジョウが意見を出す。

貴族という単語を聞き、ナツキの顔に影がおちる。

「先生・・・ どうか・・・したの・・・??」

アオイは敏感にソレを知って、ナツキに声を掛ける。

「なんもないんよ。別に。」

ふわりと彼女が笑えば、アオイももうなにも言わなかった。

「で。もとから人数の多かなかった一族やし、最近はとても少のうなってね。
 けど、やっぱり排出する神の実力はすばらしいもので。
 そんなときやったんね。当主さまがお亡くなりになったんは。
 継承の血筋におるんは、若き孫娘だけって事になっちゃっわけ。」

父母がいない事について、この国で深く問うものはあまりいない。

すべての人間が、神という存在を知り、それがこの国のすべてだった。

悲しい国。いつか来た旅人は、ほろりと言葉を置いていったという。

 

 

 
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