□ジュウイチ
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 (そうだ!! 誇りだ!! 蓮華一族の1人、そして、我、「天津日嗣天皇」が従獣についたことを!!!)





(お前…!! 日嗣が本名じゃないのか!!?)
(まだじゃ…まだ全部表せん…)
(まだあんのかよ…)
(…)
(おい、待て。どこ行くんだよ!!?)

シジョウが何を言っても、日嗣の声がもどることはなかった。

「…なんだかわかんねぇが…」

シジョウはギリリと歯を噛んで、体にムチを打って立つ。

「……オレはてめぇに勝てるらしい…」
「なっ??」

シジョウの体がまっすぐになる。

「今…オレの従獣が言ってたことだからな。本当かどうかは知らないが…」
「なめないでほしいよね…」
「…オレもだ…」

唐突に、2人の戦いは始まった。

それは今までよりも数倍早い。

「!」

そのとき、シジョウの手が、敵の手首をつかむ。

おれるほどの力せそれを引き寄せると、腹に蹴りを入れる。

「…がっ…っは…」

それでも、シジョウは攻撃の手をゆるめない。

しかし敵も応戦できるだけの力を持っているのだ。

「なっ!!? ク…ソが…」

腹を蹴り、下を向いた顔の陰からいきなり拳が飛んできて、シジョウは体制を崩す。

「あんまりしゃべると下噛むよ。」
「うるせー!!」

敵の挑発的な言葉に無意識に注意を怠る。

ガリ っと音がして、避けた刀が後の木に刺さる。

つう と一筋。頬から血が伝う。

目を釘付けにして驚くシジョウに、敵はしってやったとばかりに、神術をつかう。





 「樹神 そのたくましき力、我が立ちはだかる者の戒めとなれ…」





”無から有は生み出せない”それが、神術の掟。

その点では、森でこの神術をつかった選択は正しかったのだろう。

しかし、シジョウの得意分野は「火神術」。

「お前さぁ、自分が術使ってる間って、つまり相手も使えるってコト知ってたぁ??」





 「火神 その勇ましき力、我に刃向かう者に苦しみを与えよ! 火蝶!!」





美しき飛ぶ炎は、敵の体をくまなく焼き尽くす。

「…っ!!!」
「オレは、さっき強くなったばかりで…」

炎の威力が上がる。

「加減の仕方を知らないようだ…」

神術により、巻き付こうとしていた木々は、消えていく。

焦げた臭いをまき散らし、敵は驚くほどの速さで、20mほど後方に飛んだ。

「君は…蓮華一族の…」

黒髪と黒目。そんな珍しい組み合わせはこの世に2つとても存在しないであろう。

「…? なぜ分かった? そしてそれがどうした??」

しかし、黒髪が珍しい事を知るのは、この世に数えれるだけの者しか居ないだろう。

「…お前、黒の秘密しってるな…??」

シジョウが問いかけると、敵はふわりと笑う。

「お前じゃないよ。俺の名前は、簪。」
「カンザシ…??」
「…そう。簪。」
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