□ジュウロク
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「おっそぉ〜い!!!」

病室にはいると、そこは個室だった。

「「げ…」」

シラとシジョウが入った瞬間に、紗希は人差し指をビシっとのばす。

「人を指さすな…そんなこともならわなかったのか…」
「む…なまいき…」
「…けれど…その通じゃない…??」

シジョウが鋭く指摘をすると、壁の影から人物が現れた。

「?? あんた…誰だ…??」
「医者。」

シラの問いに、その人物はあまりにも簡潔に答えた。

「アオイの…主治医か…??」
「そう。」

またしても簡潔に答えられ、さすがのシジョウもたじたじとする。

「ねぇ…みんな…私のコト無視して話しを進めないでよ…」

むすっとした声がして、みなは声のほうを振り返る。

小綺麗なベッドの上で、アオイが上半身を起こしてた。

かなり元気になっているように見える。

「こら。小娘!! 寝ていろっていっただろう??」

すかさず主治医が注意を入れる。

「アオイです。」
「どうでもいいからな。」

  なんなんだこの医者は…

シラとシジョウに同時に浮かんだ言葉だった。

「そういえば…あなた、名前なんですか…??いちいち、先生って呼ぶとややこしいですし…」

アオイが場を取り持つように言う。

「名前… …チエだ。チエと言えば誰でも分かる。」

一瞬に、紗希とチエが素早く目を合わせたのを、子供の3人は分からなかった。

「さて、あなた達も話したいことがあるだろうし、あたしも仕事があるから…」

なぜが、今までのお節介はどこへやら。紗希は退出しようとする。

「術…つかっていいですか??」
「患者の体にはあまり触るまい。」
「なら、いいですね。」

周りが静かになると、紗希は唱え始める。









 『十ニの大地舞い、十ニの風歌う、逆巻け 両翼!!』





紗希の首からかかっていた神石が瞬く間に暖かい光を発し始める。





 『風舞!!!』





病室に荒らしのような風が舞った。だがそれも一瞬。そして、紗希の姿はここにはない。

「??」

しかし、シジョウはその動体視力の良さで紗希の動きを少しだけ追った。

紗希は、消える寸前にチエへ近づいた。

けれど、そこで何が起こったのか、今のシジョウでは分からなかった。
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