□ジュウロク
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「さて、事情をしらんでいいものは消えたし。さっさと話してみなさい。小娘。」

チエと名乗った医者の態度はあまりにも大きかった。

当然、シラとシジョウは怒るわけで。

「なんで、お前なんかに話さなきゃいけねぇんだよっ!!!」
「それにお前は全く信用がおけない。態度を改めてでてこい。」

ものすごい剣幕でまくし立てるシラとシジョウに、なぜかチエはふっと笑った。

そして、言った。





「紫水晶一族…」





その一言で何が変わったのか。

シラとシジョウには理解できなかった。

だが、アオイはさっと顔色を変えた。

「しすいしょういちぞぉ…」
「ちょっと…!! ちょっと外の空気吸わせて…!! お医者さんなんでしょ…!!ね…!!?」

シラが馬鹿そうな声にかぶせるようにしてアオイがいう。

病人にはみえないくらい早くベッドから飛び出して、チエの腕を強引につかむ。

「え…??」
「どうしたんだ?? アオイ…??」

シラとシジョウは完璧に無視し、

「ついてこないでね!!」
「え…」

アオイはさっさと病室をでていく。

「…」

そんな中、チエの目は酷く見開かれていた。何かを考えているときの癖だ。

     時は全てを癒すというが…ではまだ時は足りんのだろうな…

チエがなされるままになっていると、アオイの足はぴたりと止まった。

知らぬ間に、かなり病室から離れてきていたようだ。

「なんで…あなたが知ってるの…??」
「…」
「なんで…なにも答えてくれないの…?? あなた…ただの医者じゃないでしょ…???」

「…」

チエは答えに渋った。

「すまなかったな。それは…その名は…神宮帝さま直々だ。」
「…」
「だから、わたしが何か知ってるいるという訳ではない。誤解するな。」
「…なら…いいわ…」

チエのあきらかな嘘に、気が動転しているアオイは信じるしかなかった。

(ただの神医だと思われているわたしに神宮帝から直々の声などかかるはずがなかろうに…)

「あなた…」

チエの思いとは関係無しに、アオイは話を進めていく。

「何を知っているかはどうでもいいけど、余計な口はださないで。私が全て話すから。」
「まぁ…よかろう…」

そのまま2人は歩き出した。

飛び出した病室にむかって。

「…っ…」

しかし、アオイの目からは涙がこぼれた。

「…」

チエはその様を、ただ見ているしかなかった。

見ていることだけで、自分の心が痛んだから。
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