話
□ハチ
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よひちゃん!!
あの時ボクを呼んだ声はウソでは無いよね。
早く早く!!
これでも 君らの先生と同い年なんやけど。
先生も待ってるよ!!
ああ…
よひちゃ〜ん!!
みんな、笑っていた。
- clover - 〜幸せ。只、それだけを願って。〜<八>
ざぁざぁと雨が落ちる音がする。
洞窟で雨宿り中の一行は、大半が寝ていた。
あの後すぐに、美砂都は疲れから気を失ってしまった。
「全く… なんとも華奢で都合のよいお体ですこと。このお嬢様は」
ナツキは入口付近に腰をおろし、隣ですぅすぅと眠る美砂都を見た。
周りには、3人の子供たちが寝転がっている。
「あなたは、事の重大さをわかっているのか?」
榎澄は少し怒りを含んだ調子で答える。
「それくらいわこぅてますって〜
これでもこんなかわえらしいお子を、3人も預こうてますんでねぇ。」
ナツキは外の様子を伺いながら、榎澄の言葉を適当に受け流す。
シラもシジョウもアオイも。寝息を立てる姿はまだ愛らしいものがある。
「まだ…ハピネスの過程を終了してない生徒なのでしょう…?」
「おや? お詳しい??」
また。ちりちりと。2人の間の空気が揺れる。
「こんな任に連れ出して。大丈夫なのですか??」
「大丈夫です。これくらいの事は、ハピネスの生徒なら、誰でもこなします。」
「…」
榎澄が黙ったので、この会話は終了したかに見えた。
事実ナツキもまた外を向く姿勢に戻ろうとしたとき。
「さっき… あの黒髪の男の子がやっていたものはなんです?」
「ああ…神術の事ですかぁ。」
「ええ。何かを…?呼んでいらしたような。」
確かにシジョウは、死体を燃やすために神術を使った。
そして、"従獣"(ジュジュウ)を呼んだ。
本来、神が神術を使用する場合、必ず呪(ジュ)と神石を使う。
それは基本的かつ初歩的なものであり、高度になれば使う用具も増える。
呪と神石が第1段階とするならば、自分の神石に宿っている従獣を呼ぶ事は、第2段階に値する。
「…ですが従獣ってのは、けったいなもので、簡単には言うことを聞いてくれません。
そして1番先にすることは、その従獣の名前を知ることです。」
「ならば、先刻呼んだのはその子の、じっ…従獣の名前ですか??」
「…シジョウです。」
ナツキの受け答えから見るに、それはあたっていたようだ。
榎澄はふとシジョウの従獣を思い出す。
『…日嗣(ヒツギ)…!!』
彼がその言葉を発するだけで、獣は簡単にいうことを聞いた。
幼い顔に見た心無さが。言うことの悲しさが。
それが今の自分には怖いのだろうか…?? と。
つくづく馬鹿な人間だと。そう、思った。