舞う言の葉

□無題6
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オレンジの海
流された日記帳
記された過去
男を愛した娘の記憶

夕焼けで染まる海
娘は海に向かい
もう届かない想いを叫んだ
嗚呼
嗚呼
貴方は何故
早くに逝ってしまったの
もう一度
もう一度だけでも
その笑顔を見せて
そして抱き締めて
貴方を愛しているの
お願い
お願いよ
私を独りにしないで

娘は男を愛していた
世界なんて考えられない程に
出会いは雨降る道
娘が落としたオレンジを
男が拾い 娘に渡した
二人はすぐに恋をした
そう 世界なんて考えられない程に
甘い砂糖と
酸っぱいオレンジが混ざったような
甘酸っぱい幸せ

二人は笑った
この世の汚いものが見えなくなる程
二人は笑った
お互いを愛した


幸せは長くは続かなかった
男は病に冒された
娘は一生懸命看病した
治るように祈った

しかし祈りは叶わなかった
男の病は進むばかり
男は最期を悟った

横で看病する娘を
弱々しくなった腕で抱き締めた
そして笑顔を見せた
愛していると呟いた
そのまま男は最期を迎えた

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