綴られた言の葉

□クスト家の人形姉妹
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「今夜も暇ね〜」
「そうね〜…何か面白い事無いかしら…」
そう言いながら、ドロシーは欠伸をする。体がぽきぽきと鳴った。
「そろそろメンテナンスの時期なんじゃない?ほら、クストさんにみてもらったらどう?…ふぁ〜あ、欠伸がうつっちゃったじゃない」
欠伸をしながらドロシーにいうテネス、ドロシーの妹である。ちなみにクストは人形職人で、数ヶ月に一度、二人はクストにメンテナンスをしてもらっている。
 そう、ドロシーとテネスは人形なのだ。百年ほど前にクストの祖父であるネストが作ったものである。ドロシーは黒髪に青い瞳、テネスは金髪で同じ青い瞳。また二人はドレス色違いのドレスを着ていた。ドロシーは青の、テネスは水色だ。
「嫌よ、クストさんったら人形扱いするんだもの。私は立派なパリジェンヌなのよ!!」
ぷっ、とテネスが吹き出した。
「な、何よ」
「だって、パリジェンヌって…!馬鹿みたい!」
テネスはお腹を抱えて笑っている。
「そうなったらテネスもそうなるわよ?」
「だって、第一私たち人形なんだから。パリジェンヌも何も無いじゃない」
テネスは笑いがおさまったようで、静かに答えた。
「テネス冷静…」
「それが?悪い?」
「悪くないけど…」
「じゃあ、いいじゃない」
テネスは置かれているリビングの棚から降り、棚の下の本棚を物色し始めた。当然二人より大きな本が多いため、テネスは本を相手に必死だ。ドロシーは暇を持て余し、棚に座ったまま、リビングの窓から外を見た。
「あの…」
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