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□運命交差(後編)
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窓を開けたのだろう。いつもより空気が綺麗だった。
「じょーのうちさまぁ?」
「こんにちはー」
 止める間もなく、双子達はぱたぱたと勝手に入っていった。
 ミーハー心を抑えきれなかったのか、それとも油断を誘うためか、いつものノリに戻っている。
 そして、空気が突然冷えた。立ち止まり、息を飲んで、混乱している。
 無理もなかった。
 そこになにが在るのか。ジンは嫌ほど知っている。
 電気のスイッチに手を伸ばす。
「ジョーカー。連れてきた」
 カチリと固い音を立てて、灯りがついた。
 ジンの一歩前で固まっている双子の肩を叩く。
「――ジョーカー、城之内條太郎だよ」
 会いたかったんだろ?
「・・・・・っ」
 ぐっと、二人の肩を押して、それに近づけた。
 白い窓。白いベット。
 でもそれ以外はパソコンとディスプレイ、そのケーブルが縦横無尽にのたうち回っている。
 その中心に置かれた白いベットは、あたかも童話のようで、一種の結界が張られている。
 絶対不可侵。
 白いシーツの上に、男が寝ていた。
 何年も前、世間に見せていた姿よりも、削痩し、手足が枝のようだった。皮膚にもはりがない。
 虹色に輝いていた髪は真っ白で、肩でばっさり切られている。
 その寝顔に表情はなく。
 その瞳に笑みはなく。
 それはまるで棺桶で眠っているようで。
「・・・・・死んじゃった・・・・?」
 双子の片割れ――玲の目に涙が溢れる。明はがたがたと体が震えている。
 彼女達にとって城之内條太郎とは神崎神よりも偉大で、神様だった。
「死んでないよ。君たちに連絡をしたのは間違いなく彼だ」
 ジンは、二人から離れて、ジョーカーのもとに近づいた。
「………3年前からかな。悪質な交通事故にあってね」
 ベットの頭側をのぞき込む。
 ………エンに掃除を任せた俺が馬鹿だった………
 ありとあらゆる隙間に色んなものが詰め込まれている。
 あーーーーーー。
 ジンはがさごそと探し始めた。
「起きてー」
「起きてよーーー」
「にゃーーー」
「きつねさんーーー」
 振り返ると双子がジョーカーの上で跳ねたり引っ張ったりしている。
 ・・・・・・・・女の子に触られて嬉しいだろう。感覚無いけど。ざまぁみやがれ。
 やっとこさ目当てのものを引っ張り出した。
「ほら、どいて。あんまり触ると鬼に怒られるぞ」
 ヘルメットをジョーカーの頭にかぶせる。
「ほら、ジョーカー。起きろ」
 そしてスイッチを入れた。
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