廃校舎の利用者
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〜和也と志貴〜
俺は思う。
うちの高校(荒沙妃)には、性欲に飢えた人間が多い。
男女問わず、常に〈快感〉を求めている。
全く…何て高校だ。
廃校舎は、立ち入り禁止なのを良いことに常に誰かが何かをしているようだ。
教師が毎日、廃校舎を取り壊す為に監査を行う。
しかし、男女のそれらが行われているのは、今のような昼休み…。
「和也。何してんの?」
背後からの声に、俺は振り向いた。
「別に」
「…まあいいや。今日も凄いみたいだね」
立ち入り禁止の札をまたいで奥を見つめるこいつは、志貴(しき)。
まあ…幼馴染みのようなものだ。
「志貴は好きそうだよな、ああいうの」
「うん。和也は嫌いなの?」
「いや…」
今も、女のあえぎがかすかに聞こえてくる。
けど、俺には別の企み…希望があった。
最初は有り得ないと悩んだが、いつでも俺に笑いかける志貴を見てるうちに、ひょっとして…という解釈をしてしまう。
「志貴…」
「ん?」
俺も、立ち入り禁止の札をまたいで中へ入った。
志貴はいつも通りに笑っている。
「ちょっとそこまで行ってみないか?」
何を言っているんだ俺は…。
だが、志貴は「いいよ」って…マジか?!
「え…」
「なに驚いてんの?ほら、早く」
志貴は廃校舎の中へと走って行った。
…どこ行くんだ?あいつ…。
女のあえぎはそっちじゃないだろっての。
「待てよ」
俺は志貴に追いつく為に走った。
志貴は、くち果てた木造校舎の最奥の教室にいた。
その教室だけ埃が落ちていないという違和感に、俺は何故か…志貴を見つめてしまう。
「僕が掃除したんだ。綺麗でしょう?」
屈託のない笑みで、志貴は俺の背後へ回り…つっかえ棒を扉にひっかけた。
「お前…何してんの?」
「…和也…」
事もあろうことか、志貴は俺に抱きついてきた。
だが、俺は…好機だと思った。
だから…抱きしめる。
「…志貴?」
囁いてやると、志貴は泣きそうな顔で俺を見上げてくる。
「あのね…」
何かを言おうとしたようだけど…もう、我慢できない。