※短編集※

□幼少時代(U)
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某月某日。


慶太と光輝が小学校へ入学すると、父親である雄二は「やっと落ち着ける」と安堵の溜め息をついていた。


「慶太、光輝。入学おめでとう!」


「入学祝いのランドセルは気に入ってくれたかしら?」


「すまないな、二人とも」


雄二が申し訳なさそうに言うが、夫婦は彼の肩を叩いて微笑んだ。


村川夫婦から贈られたピカピカのランドセルを背負い、双子は「ありがとう」と笑顔で父親の傍らに立った。



「由梨香。平気か?どこかで休もうか」


夫がそう気づかう。


由梨香のお腹には、現在、第二子が宿っている。


しかし、母体は健康で、きっと元気な赤ちゃんを産んでくれることだろう。


彼らは夕食を共にし、帰宅した。


雄二は双子の荷物を降ろし、思い出す。


「・・・ふむ・・・。名前を書かないとな・・・」


体操着や教科書、教材など・・・。


双子はまだ幼いので、親が書いてやるのは当然の義務だ。


ゼッケンに油性ペンで名前を書いてやると、双子は興味しんしんで覗き見てくる。


「・・・お前達。風呂に入りなさい・・・」


「はぁい」
「うん」


何だか恥ずかしいので、双子を追い出した。


双子はもう二人だけで入浴出来る。


雄二は黙々と名前を書く。


双子は入浴を終えると、また父親の手元を覗く。


「お父さん。字、上手だね」


そう言ったのは慶太だ。


「ありがとう。さあ、もうお休み。明日から1年生なんだから」


「はぁい。おやすみなさぁい」


「おやすみ・・・」


双子は部屋へ入ると、すぐに眠った。


雄二は黙々と名前を書く。
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