※短編集※

□かつての日々(T)
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 〜お出かけ〜


悟史、中学三年生。


由梨香、中学二年生。


「悟史!!!」


母親が怒鳴る。


私室で小説を読んでいた悟史は、いぶかしげに部屋を出た。


「何だよ!!」


「あんた、洗濯物を溜めてるでしょう!!一気に出されると面倒なのよ!!さっさと出しなさい!!」


「うっせぇなぁ…」


渋々、悟史は洗濯物を抱えて廊下を歩く。


「お兄ちゃん…また?」


階段を上がって来た由梨香が、眉をしかめた。


「うっせぇ、バーカ。どけ」


「ちょ…くっつかないでよ!」


「俺の台詞だ!どけったらどけよ!」


悟史は由梨香の背中に肘鉄を喰らわせた。


「あああああん!!」


泣き出した由梨香を放置して、悟史は奥の部屋へ入る。


洗濯物を洗濯機の側の籠に入れて、部屋を出た所で…母親に頭を叩かれた。


「何すんだよ!!クソババア!!」


「暴力を振るうなと、何回も言ってるでしょうが!!」


バシッ。


母親は、また頭を叩く。


「バシバシ叩くな!!馬鹿になんじゃねぇかよ!!」


「また、そういう口のきき方をして!!ええ?!」


今度は、頬をつねられた。


「ひぃででででで!!!」


「部屋にばかりこもってないで、父さんを手伝いなさい!!」


「ええ?!!」


「良いわね?!!」


母親は怒り肩で、階段をドシドシ降りた。


後でまたグチグチ言われても面倒だと、悟史は庭へ行く。


父親は、庭の花壇の雑草を抜いている。


「親父」


「おお、悟史。丁度良い所に来たな」


父親は立ち上がり、腰を鳴らす。


「母さんに、花壇に植える物は何が良いか訊いて来てくれ」


「分かった…」


悟史は、居間へ行く。


母親は掃除をしていた。


「母さん」


「何?」


「親父が、花壇に植える物は何が良い…って」


「そうね…。水の要らない物が良いわね」


「水の要らない物…」


悟史は再び、庭へ。


「親父。水の要らない物…だって」


「水の要らない物…。アレしかないな…。悟史、買いに行こうか」


「面倒臭いな…」


「たまには太陽を見ないと、モヤシになるぞ」


父親は着替え、車を出した。


「母さん。出掛けて来るよ」


「ああ…あなた。ついでに…」


という訳で、悟史は父親と外出する羽目になった。
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