永遠の存在
□変装上等:後編(全57ページ)
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帰路に着こうとしていた悟史は、教室のベランダからの話し声に嫌な気分になっていた。
「調子に乗ってんじゃねえぞ」
「チビが…」
「まぁたビビッてだんまりかよ。ケッ」
男子が三人がかりで、一人の男子を罵っているようだ。
男子達がこんな言葉を言った時、悟史は身の毛がよだつ。
「死んじまえ」
「皆、望んでいることなんだよ」
「お前一人が死んだって、誰も悲しまないよ」
死んでしまえ…。
人が人として生まれた限り、言ってはならない言葉。
悟史はそう、教えられた。
怒りにかられ、気がつけば三人の男子がこちらを見ている。
「まだいたんだ」
男子の一人は、愛想良く笑った。
「お前ら、女々しいな。そんなに、そいつに死んで欲しかったらさ…テメェで殺ればいいのに」
悟史は鼻で笑い、罵られていた男子に手を差し述べた。
しかし、男子はクスッと皮肉な笑いを浮かべ、首を横に振った。
「…君さ、いじめられてる僕を助けようとしてない?」
男子の言い方に、悟史は首を傾げた。
「だって、いじめじゃん」
「まあ…はたから見ればそうなるかもね。悪いけど、こんな奴ら怖くも何ともないし。うっとおしくて仕方ないよ」
男子が言うと、三人は何かを囁いた後、悟史の肩を叩いて去っていった。
「何だ?あいつら…」
「…フン」
男子は悟史を避けて、足早に歩いていってしまう。
「あ、おい?」
悟史はしばらく呆然と立ち尽くした。
(あいつの…髪型…)
男子は片目を髪で隠していた。
いくらファッションだとはいえ…目の健康には悪影響だろう。
「あ〜…三山…だっけ。まだいたんだな」
教室から、愛野が顔を出した。
「学級委員。お前、いじめられてる奴がいるって知ってたろ。何やってんだよ」
「いじめ…ああ、ひょっとして…日向のこと?日向は強いからね…俺が構うとすぐ睨むんだ」
「へぇ…あんまり頼りねぇんだな、学級委員は。どーでもいいけど」
悟史は愛野を鼻で笑って、教室を出る。
(あの愛野って…なんか胡散臭いよな…)
男子ながら長髪で、どことなく清潔感を漂わせる。
あまり関わらないでおこうと決めたのだった…。