永遠の存在
□転校生(全14ページ)
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2002年4月。
入学式が終わり、在校生達が下校する中。
一人の少女が人気のない、裏庭に生えるまだ花を付けるには早過ぎるキンモクセイの木の下で、携帯片手に声を殺して泣いていた。
彼女はニ年になったばかりの、名は三山由梨香(みやまゆりか)。
豊かな金髪には桜の花びらがからみついている。
ようやく涙を拭き終えると、携帯をカチカチと鳴らす。
『裏庭にいます』
そうメールを打って送信すると、一分とかからず返事が返って来た。
相変わらず早いな、そう思い内容を見て驚き、慌てて辺りを見回す。
『木の上に居るよ。探してごらん』
返信された内容だ。
木と言われても、この裏庭にはキンモクセイの木の他に、数本のシラカバやモクレンといった木々が円形状に生えていて、どの木の上か検討がつかない。
由梨香はただ、うろたえていた。
泣いていた所を見られたくなかった。
心配をかけたくない相手だから。
…その時、背にあるキンモクセイが揺れた、と同時に何かが降って来た…というよりも、飛び降りたのだろう。
一度軽く飛び跳ね、少女へと振り向く。
整った顔立ちをした少年だ。
由梨香の金髪よりも色素の薄いその髪は、白い肌とスカイブルーの瞳によく映えていた。
由梨香と似た制服を着ていても分かる細い体は、脆弱そうで折れてしまうのではと疑うほどだ。
「兄さん…!」
由梨香は焦った。
兄と呼んだ少年は、ずっと自分を見ていたのだろう。
心配をかけたくない相手なのに。
「なあ。何で泣いてたんだ?何かあったのか?」
兄…三山悟史(みやまさとし)は、同じスカイブルーの瞳を持つ由梨香の目を優しく見つめ、言った。
「何でもないの」
一言そう答えると、由梨香は無理に微笑み「帰ろ」と悟史を促した。