永遠の存在

□再会(全35ページ)
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2002年5月。


黄金週間、三山宅にて。


「…マジでやんのか?」


「面白そう…かな?」


「当たるとは思わなかったよ…」


悟史達は、夕飯をご馳走しようと白崎や村川、清水を招いた。


献立をアミダくじで決定したのだが…。


「そもそも、闇鍋…って、何?草履とか入れる訳?」


「アホ。部屋を暗くして、材料をブッ込むんだよ」


「出汁はイカ墨と昆布でいいかしら?」


「…何か、もうやる路線だし…。怖いてか、やり直そうぜ?」


村川は、少々卑屈だ。


こうなった原因は、白崎にあった。


「五人十品の希望が、どうして当たっちゃったのかな?とりあえず、ごめんなさい」


そう言う白崎に「まったくだよ」と清水は笑う。


三山兄妹は、材料を既に決めた様子。


村川は…。


「良いんだけどよ。卵は勘弁してくれ…」


村川は、卵アレルギーをもっている。


首筋は薬の反作用で白くかぶれていて、時々掻くせいで赤く引っ掻いた跡が痛々しい。


「また酷くなってんな。食えない物に関しては考えがある。心配すんな」


村川の首筋を覗き見、悟史は笑いかけた。




五人は実費で、それぞれ材料を調達してきた。


部屋を暗くし、次々とそれを鍋へと入れていく。


「…いよいよだ…」


五人は生唾を飲み、叫んだ。


「じゃんけん!!!」


「ほいっ!!!」
「ほっ!!!」
「ていっ!!!」


清水以外の全員が、パー…。


「一番手決定!!!さあさあさあ」


四人は清水を上座に座らせ、各席につく。


「な…ちゃんと食べられる物…入ってる?妙な匂いがするんだけど…」


箸を片手に、ぐつぐつと煮え立つ真っ黒い鍋を覗き込んで、清水は顔を引きつらせる。


「大丈夫だろ」


他人事のように言う悟史。


何とも甘い匂いが食欲不振にさせる。


しばらく鍋と睨み合っていたが、意を決した清水は、箸を鍋の中へ刺し込む。


「いただきます………」


一口食べ、二口食べ、歪なその材料が何なのかを、清水は知ってしまった。


「…これ…林檎だ…」


それを聞いた悟史は驚く。


「フルーツ有り?!茹で林檎じゃん!!!」


その隣に居た由梨香は「それ、私」等と告白する。


「可愛い顔しておいて…怖ぇ…」


三山兄妹の向かいに座っていた村川はそう言いながら、頬杖をついて清水に同情の眼差しを送る。


「二番手、いきま〜す」


由梨香は箸を鍋の中に入れ、摘んだ物を口にした。


「なあんだ。しし唐だわ」


美味しそうに食べる由梨香に、白崎は。


「しし唐は、アタリがあるかもよ?」


と警告してやる。


大丈夫よ、と構わず噛みしめる由梨香の隣で、悟史はニヤリ…とほくそ笑んでいる。


突然、由梨香は悟史の背中を叩いて、涙目になりながら「カライ!!!」と叫んだ。


アタリだったようだ。


「わざわざ店のオッちゃんに聞いて買ったんだぜ。いやあ、ざまあねぇなぁ」


バシバシと膝を叩きながら悟史は喜んだ。

最低だコイツ…と一行は呟く。




今日の夜は長い…。
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