永遠の存在
□変装上等:前編(全68ページ)
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六月一日。
ノリのきいたブラウスに袖を通す悟史は、少し身震いした。
(うへぇ…寒い。まだ半袖には早過ぎるぜ…)
校章の入ったピンでネクタイを留め、校章のついたベルトと鞄を片手にドタドタと居間へと階段を降りる。
「おはよう、兄さん」
朝食の支度をしている由梨香は、悟史の姿を確認するとすぐに熱い紅茶を入れてやる。
「おはよう。…ちょっと待った」
細目になって近寄って来る悟史に驚きながら、由梨香はただ、その場から動けなかった。
「な…何?」
「女子のブラウスって…そんなに薄かったか?」
眉をしかめ、親指と人指し指で顎を摘む仕草の悟史は、まじまじと妹の上半身を見つめる。
「やっぱりそう思う?今年から女子だけ新しくなったのよ。昨年着ていた私のは、替えごと虫に食われちゃって…」
「新しく購入…ってワケか。けど、気をつけろよ」
「何を?」
「…ブラの色が透けてる」
「うっそ!!」
慌てて鏡台へ自身を映し、まじまじと見るが由梨香には別にそうは見えない。
「兄さんの嘘つき!スケベ!!」
「いや、本当だって。何なら色当ててやろうか?」
「どうぞ!!」
威張ったように平らな胸を突き出し立つ由梨香に、悟史は真顔で言った。
「赤」
「キャア?!!!」
どうやら正解らしい。
「どうしてよ?!」
「こういうものは、女の目には見えなくて当然なの。男の目じゃねえと見えねえの。良かったな、家出る前で」
「タンクトップの上から、どうしてわかるのよ…」
ブツブツ言いながら、私室へ行く。
用意された朝食を食べながら、悟史は…。
(しかし…赤って…。妹よ…)
と、心の中で涙した。
「今度はどう?!」
「よし!夏はその色でいけ!!」
「…って、コレ…白よ。何の色気もないわ…」
口に含んでいる物を吹き出しそうになり、ムセた…。