永遠の存在

□教員解雇(全96ページ)
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七月一日、月曜日。

例年より早い梅雨明けから三日が経っていた。


何の基準で植えられたか分からない、荒沙妃高校の裏庭に生える様々な木に蝉が居ついたようだ。

そんな蝉の鳴き声は、広い職員室の中では見事にかき消されてしまう。


「おはようございます」

「おはようございます」


すでにデスクに向かっていた教員が、出勤してきた教員にお馴染の挨拶を交わす。


「おはようございます」

「おはようございます」


教員達は、笑顔で挨拶を交わす。


しかし…。


その中で、朝から不穏な空気を漂わせる教員二人の姿があった。


「………」

「………」


向かい同士のデスクに腰掛け、すでに仕事をしている。


「ま…またですか?あの二人は…」


教員の一人が、山口に囁いた。


「みたいですね」

「山口先生…まるで他人事のようですな」


苦笑した教員が去ると、山口はデスクに向かう二人を横目で見た。


「………」

「………」


相変わらず無言の、うち一人は、野杉だ。


そして…もう一人は…。


「…ふぅ…」


色っぽく溜め息をつくと、立ち上がる。


そう…女性教員だ。


野杉が仕事関係者の中で、最も嫌う存在…。


女性教員が職員室を出て、しばらくしてから野杉は仕事の手を止めて、毒を吐くように呟いた。


「…歩く猥褻物が…」


それをまともに聞いてしまった教員達は、聞かぬふりをした。


そして…身震いした…。
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