永遠の存在
□荒沙妃高校七不思議(全56ページ)
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七月中旬。
蝉の声がうるさく、日差しは強く…最高気温36℃を超える猛暑…。
「…あぁ…っ…づぅう…」
暑さに滅法弱い村川が、机に伏せている。
「情けない…」
パタパタと下敷きを煽る清水が、呆れたように溜め息をつく。
「まったくだ」
同意する悟史は、暑さには強い。
彼らは今、期末試験の結果待ちで短縮授業中だった。
「村川君、心なしか痩せたような気がするんだけど…」
暑さに弱い日向が、バテている村川の机に腰掛けた。
「夏バテには早いぞ」
尻まであった長髪が首筋までになった宮島が苦笑した。
「髪切ったんだな。何か違和感あるぞ…」
悟史が言った。
「今年は涼しい方だとはいえ…汗疹が酷くてね。切ったのは何年ぶりだろう…」
宮島は、どうやらお気に入りの様子。
期末試験が返却され、互いに見せ合って復習した。
「…結局、プールに入れなかったね」
清水が呟く。
そうなのだ。
大破したプールは校内移転となる為、工事中だった。
「野杉もだいぶ、へこんでるらしいぞ。努力を全部、松本に無駄にされたんだからな…」
あれから、悟史達は野杉を見ていない。
彼がどうしているかは風の噂にしか伝わって来ない。
「…生きてるのかな?あの人…」
日向が笑う。
「コラコラ…」
宮島は苦笑した。
昼までの授業が、一週間続く。
授業といっても期末試験返却か、自習くらいのものだが…。
「三山、ちょっといいかい?」
一人の女子生徒が、悟史の席に手をついた。
「おう。何だ?」
「後輩が、話があるんだってさ。告白するつもりなんだろうけど…顔貸してくれないかねぇ」
ケバい話し方のこの女子…かなり身長が高い。
―奈津井恵。
元、バレーボール部のキャプテンだ。
「しょうがねぇな…。また心が痛くなっちまう」
はなからそういう話だったら断わるつもりの悟史は、溜め息混じりに言った。
奈津井と連れだって教室を出る姿を見届けた一同は…。
「…奈津井って…三山と身長、並んでたっけか…?」
宮島が囁く。
「さ…さあ…」
日向の笑顔はひきつる。
「俺…奈津井は苦手なんだよね…」
いつになく、清水の態度が急変した。
あんまり普段と態度が違うものなので、宮島も日向も、その話題を口にするのは辞めた。