永遠の存在

□夏の初恋(全81ページ)
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八月一日。


三山宅では、真夏にあるまじき事が起こってしまった。


「…クーラーが壊れた…」

「あ〜あ…」


居間のエアコンが、水を吐いて風を送ってこなくなったのだ。

悟史と日向は、エアコンを見上げて脱力する。


「今、買い替える予算なんて全くない!!むしろ赤字続き!!夏はまだ長いんだぞ!!冬を迎えられるのかも怪しい!!!」

「三山君…ごめんね…。僕が居るから…」

「聖は悪くない。とっくに寿命が過ぎていたんだよ。それを…使えるから平気だと放置していた親父が悪い。母さんは買い替える気満々だったのに…」

「三山君…。今日はまた、一段と口数が多いね…。何か嫌なことでもあったの…?」

「実は…また宝くじが外れて機嫌悪いんだよ。俺には、そんなささやかな運気さえも与えてもらえないのかよ!」


そんな時、インターホンが鳴って玄関のドアが開いた。


「うぅわッ!!蒸し暑ッ!!どうしたの?!冷房もつけないで!!」

「人ん家に来ておいて、言うか…オイ…」


訪ねて来た白崎を、悟史は恨めしい目で睨む…。


「ごめんなさい…。でも…今日は、猛暑だよ?最高気温40℃を超えるんだって」

「…すでに人間が生きて行ける気候じゃねぇな…」

「…あ…」


日向が鼻血を滴らせた。


「大丈夫か?!」

「大丈夫…。僕…暑いの苦手で…」


田舎育ちの日向には、東京の猛暑に耐えられるように体が出来ていない。


「白崎…制服以外でスカートなんて珍しいな」

「暑いもん。ズボンなんて履いてらんないよ!」


白崎の覗ける脚に、悟史は…。


「…大根」


ボソリと呟いた。


「あ?!!」


白崎は駆け寄り…その胸ぐらを掴んだ。


「それより…。お前、何しに来たんだよ。由梨香だったら、昨日の夜から利音の家に行ったきりだぞ」

「そうなの?約束してたんだけど…。一日に会おうねって」

「由梨香が約束をすっぽかすなんて、初めてだな…。携帯は鳴らしたか?」

「うん。繋がらなかったの。まあいっか……。あたし、帰るね」

「待てよ。お前、どうせ暇だろ?ちょっと頼まれてくれないかな」


悟史が両手を合わせてせがむので、白崎は快く了解してやる。
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