永遠の存在

□教員宿泊研修(全43ページ)
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八月二十四日。


夏休みがもうすぐ終わるという時。


野杉は、朝からアイスを手に出勤した。


「いや〜…暑い。おはようございます」


学校に着き、冷房が効いた職員室に駆け込む。


暑さには強いが、今日は本当に…暑い。


「おはようございます〜」


桃井が笑顔で応え、ソファーで横たわる稲瀬をウチワで扇いでやっていた。


「稲瀬先生。お昼寝には早過ぎるんじゃないですか?」


「熱射病なんですから、いたわってあげなさい」


そう言ったのは、山口だった。


「アイス買って来ましたよ。ほら、稲瀬先生。しっかり」


野杉は持参したアイスが入った箱からドライアイスを取り出して、稲瀬が差し出した手の平に置く。


「…ぅあっちぃい!!ひ…酷い…。俺…マジでヤバいのに…」


稲瀬はドライアイスを捨てた。


「顔色良いし、夏バテもあるんじゃないんですか?」


「…そう言われると、面目ない…」


各自はアイスを食べて、天国気分を味わう。


山口が水を入れたカップにドライアイスを入れてやると、稲瀬はカップから吹き出る煙幕を浴びる。


「毎年、コレが嫌なんですよ…」


山口は書類を手に、ぼやいた。


「野杉先生は今年、進路相談の担当になったから初体験だな」


「ただの視察でしょう?来月の宿泊研修の…」


なおもぼやく山口に、野杉は首を傾げた。


「昨年は、無人島…でしたよね」


「えっと〜、週に一回しか船が来なくて〜」


「カンパンでも持って行けば良かったな…と後悔した」


稲瀬と桃井、山口らの体験者の語りに、野杉は不安になった。


「俺達を苛める為だけの視察なんだ…」


山口が怪訝そうに溜め息をつくと…背後から教頭が、久しぶりに登場した。


「それは違うぞ。新学期に備え、休みボケを解消して生徒達に示しがつくようにと、ワシからの心遣いなのだよ」


「何が違うものですか!!全く…あんたは、昔からそうだな。何でもかんでも言いくるめりゃあ良いってものではないでしょうに…」


さも自分は親切だと主張した教頭に、山口は反論する。


二人はしばし、睨み合った。
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