永遠の存在
□宿泊研修(全36ページ)
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九月某日。
「…何か、暗いな…」
3-D総員を乗せた観光バスは、港へ向かって走っていた。
「山口先生〜。三山君がいないから、皆元気がないんですよ〜」
「弱ったな…」
しかし、村川と清水は元気はつらつ。
宮島と日向も、会話に華を咲かせているようだ。
「あ〜、海ぃのぉ〜…しぃぐれぇえ〜のぉ〜」
「桃井先生…。演歌、お好きなんですか?」
「はい。最近、フォークソングも好きですよ〜」
「フォークソング…懐かしいな。神田川とか」
「あなたは、もぉ〜、忘れたかしら〜。赤い、手ぬぐい、マフラーにして〜」
「おい、桃井さん!その歌…悲し過ぎ!!」
村川が叫んだ。
「どうせなら…。ツバメよ〜、遠い空かぁらぁ〜」
「教えてよ〜、地上の星よぉ〜」
「中島みゆきを知っているのか、村川は…」
山口は苦笑した。
次第にバスの中は活気に満ちて、生徒達は雑談し始めた。
「清水。食う?」
「うん。ありがとう」
矢吹が差し出したポッキーを貰う。
「矢吹、俺も欲しい」
「もちろん。日向は五本くらいいっとけ」
「わーい!」
「聖はいつか糖尿になるな」
「アッハッハッハ!!宮島、糖尿って遺伝なんだぞ」
「嘘だろ?!」
「確か、僕らの父さんは痛風の域があったよねぇ」
「毎日毎日、フルコース食べてりゃ痛風にもなるよ。米くらい送れっての!」
更に賑やかな車内。
バスを降りて、酔った生徒を桃井が介抱している間に山口が隊列を整える。
「A・E・Fが遅れているようだな…」
携帯を手に、山口は業者と相談している。
「どうされます?」
「この、分岐点で待ちましょう。交通情報は?」
「今のままだと…後30分ですね」
三年のクラスABCと、DEFはそれぞれ目的地が違う。
昔、生徒が一人行方不明になって、置き去りにして来たのが原因らしいので…人数を削減する為に分けたのだ。
「では、Aが到着次第に我々は出発します」
3-Bの担任教諭は言った。
「分かりました」
30分が経って、到着した3-Aと共にBとCは山を登る。
その10分後…。
「すみません…。生徒が急病で…」
3-Eと3-Fが到着し…Fの担任である保坂楓(ほさかかえで)が山口に謝罪した。
「大変でしたな」
休憩を取らせ、山口らは生徒達をまとめて港へ向かう為、再びバスに乗る。