永遠の存在

□体育祭(全77ページ)
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十月一日。


ようやく制服が冬ものになり、新しい気持ちでそれぞれ過ごす…はずだった。


「今年の体育の日は…14日だ」


教室で、昼食を食べながら宮島が新しい携帯で通話している。


「いいか?!何としても間に合わせるんだぞ!!」


通話を経ったと思ったら、また携帯は鳴る。


「まだだ?!!お前達、地獄を見たくなかったら、さっさと足を動かせ!!僕もすぐに行くから!!」


通話を経ったと思ったら、また携帯は…。


その繰り返しだった。


その様子を見ていた山口が、宮島の肩に手を乗せて頭を下げる。


「あ〜あ…。山口の奴、宮島に大感謝だぜ」


「うん。野杉がズボラだから」


村川と清水が、そう囁く。


「お前達も、宮島を見習ったらどうなんだ」


聞こえていたらしい山口が苦笑した。


「だって…」


「うちの番長が…」


二人は、悟史を指さす。


ホケー…と眼球を天井へ向けて、時々溜め息をついている。


山口はガタンッと慌てて悟史の肩を揺すった。


「三山!!どうした!!」


「…何が…?」


「熱でもあるんじゃないのか…?大丈夫か?」


「…大丈夫だよぉ…」


山口はガタンッと後退る。


「だよぉ…?ああ…すまない、三山。ゆっくり休んでいてくれ…」


山口が走り去った後、宮島が悟史の鼻の穴に指を入れて、上に引いた。


「…んが…」


「お〜い。しっかりしてくれよ〜、番長さん。体育祭がなくなっちゃうかもよ〜」


頭を叩いて、宮島は昼食もそこそこに立ち去った。


「三山く…?!!」


教室へ入って来た日向も、悟史の姿を見てその場で固まった。


「発作が出たんだね…アハハ…」


「発作?何の発作だよ。昼休みになってから、ずっとこうでさ」


清水は溜め息をつく。


「川辺君の葬儀の後くらいから、様子が変なんだよね」


「って、昨日だし。他に原因があるんじゃないの?悟史がこんなだから、大変なんだよ」


清水は教室へ訪れて来た女子生徒を追い返す。


「…こんな風に」


「成程。僕らに危害が及ぶのは嫌だね、ある意味」


日向は慣れた手つきで悟史の頬をひっぱたいた。


「…んあ!いってぇえ…」


「お弁当食べないと、由梨香ちゃんが怒るよぉ?」


やっとこさ昼食を食べだした悟史を見て、清水と村川は「ああやれば良いんだ」と頷き合う。
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