永遠の存在
□外伝:責任の所在(全4ページ)
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1月下旬。
三山宅にて。
「…へぇっ…へぇっ…」
「………」
「…へぇっ………あ、くしゃみが出そうで出なかった…」
鼻をすする日向にコケる悟史。
「お前な…」
「アハハ。さて、バイトの時間だよ。宜しく!」
「へいへい…」
いわゆるバイクの2ケツでバイト先に向かう二人。
今日も「キャシー」は、商売繁盛のようだ。
「あらぁ、悟史君に聖君。お姉さん、寂しかったわぁ♪」
太い声の女性が二人に笑いかける。
「こんちは、メアリーさん」
「あれっ?口紅変えた?凄く良い色ですね」
「やぁん、分かっちゃう?これ、実はリップなのよぉ。酷く荒れちゃってぇ」
その時、ガラスの割れる音が遠くから響いた。
「何やってんだ!!!そりゃあフランス直輸入のワインじゃねぇか!!!」
「ご…ごめんなさい!!あああ…と、とにかく片付けるわ!!」
「ったく…勘弁してくれよな!!!」
怒鳴っているのは三浦で、謝罪しているのは峰倉のようだ。
「まあ…リョーコさん、また調子が悪いみたいね」
「リョーコさんが?どうかしたのか?」
悟史が訊いた。
「何だか元気がないのよね…。ここ最近、マスターに怒鳴られてばかりだし…心配だわ」
「…それとなく様子を見てみるか」
悟史と日向はスーツに着替え、働き始めた。
カランコロン…。
ドアに付いたカウベルの音がすると、悟史はすかさず駆け寄る。
今日はホール係だ。
「いらっしゃいませ、お疲れ様でした。何名様ですか?」
「三人だ」
「ご案内します。三名様、来店でーすッ!!」
カランコロン…。
今度は日向が駆け寄る。
今日はホールと接待補佐の役目らしい。
「いらっしゃいませ。何名様ですか…って…」
「あれっ?き…奇遇だねぇ…」
望月が里子と隣立っていたのだ。
「ほぅほぅ、デートですかぁ…ムフフフッ、このっ、このっ。憎いねぇ」
日向は肘で望月の脇腹を突く。
「アハハッ。聖、アタシから誘ったんだよ」
「里子さんから?!!」
「そうさ。別に不思議じゃないはずだよ?ほら、早く案内してくれないかボーイさん」
日向は心底驚いて、しかし仕事なので二人を奥へと案内した。