※短編集※
□毎日騒動(T)
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時刻は6時30分。
悟史ら三人は、由梨香がこしらえたお弁当を通学鞄に入れて、居間で雑談を交わす。
「兄さんと日向さんは、今日はバイト?」
「俺は休みだけど、町内会議があるから遅くなるかもな…」
「僕はバイトだよ。ちゃんと戸締まりだけはしてね」
「ええ、もちろん。兄さん…負けないでね」
「あ…ああ。正直、気が滅入るけどな…」
今日の、それぞれの予定を大まかに伝え合う。
時刻が7時になると、三人は通学の為に家を出る。
「いい加減、チャリ買おうぜ?」
「そうね…。帳簿と相談してみるわ」
「いつも思ってる。駅まで遠いよね…」
最寄りの姫賀丘駅まで徒歩40分かけて歩く。
7時55分発の電車に乗らなければ遅刻確実だ。
時々、電車の中で。
「野杉!はよッス!」
「おお、おはようさん」
通学・通勤ラッシュの為、電車の中は混雑している。
なので、悟史達は通勤中の彼と会うとラッキーだと言って、その長身にすがり付くのだ。
「今日は野杉に引っ付いてれば大丈夫だね♪」
「それはどうかな?」
「どういうことだ?」
「家を出て2回声を掛けられ、菅原を出て既に3回、尻を撫でられた。男性専用車両を希望したい…」
「黙ってるのがいけないんじゃ…」
「黙ってなければ遅刻するだろう?」
「野杉…。俺には気持ちが痛いほどよく分かる…」
そう言っている間に、立花駅に到着。
時刻は8時。
そこから学校へは徒歩30分かかる。
この辺りからは、同じ制服の男女が、悟史や由梨香を横目に何やら囁く。
「オマケで野杉が付くとタチが悪い。見ろ、ケバい姉ちゃんやチャラ男までこっち見てるし」
「そう言うお前達のお陰で、俺への視線がいつもの倍だ。何が楽しいんだろうな」
「全くだよな」
悟史と野杉は愚痴を言い合うが、日向は二人を睨み付ける。
「ルックスに自信ある人はいいよね〜。シークレットシューズでも履いてみようかな」
「日向さんも、度胸があって男らしくて素敵ですよ♪」
「そう?気休めでも嬉しいよ」
「本当のことです」
そう言ってる間に、時刻は8時30分。
学校に到着した。