※短編集※
□番外編(T)
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〜悟史と野杉の出逢い〜
入学式が始まっても終わってからも、うつ向きながら歩く金色の髪の少年。
分厚い、青いレンズの眼鏡を時々、指で押し上げなければならないのは、もちろん彼がうつ向いているからだ。
櫛を入れない髪は肩まであり、それを一つに束ねている。
背中は丸く、着ている制服が小さく見えるくらいにあまりヨレがない。
少年が歩く度に、周りの生徒達がこちらを向いて囁き合っている。
「あいつ、キモくね?」
「オタクっぽい…」
「夜中、ときメモやってニヤニヤしてんだぜ、きっと」
クスクスと…しのび笑いが聞こえてくる。
少年は眼鏡を押し上げながら、胃を押さえ…更にうつ向いてしまう。
「どうした?」
そんな声が聞こえたが、振り向けない。
早くここ(学校)を出たい…。
少年は早足になってその場を逃れようと歩いた。
「先生〜」
「ほっとけば〜?」
少年は思った。
よほど人気のある先生なんだな…と。
「あの先生、かっこいいよね」
そんな声さえ聞こえる。
(ああ…やっぱりそうか…。人間は皆、顔でそいつの性格までも空想して現実でもそうであるように接する。所詮は外見…)
胃痛が酷くなり、押さえる手に力がこもった。
ようやく息苦しい学校から外へ出られた時、少年は自分の両親の姿を見つけ、駆け寄った。
「頑張って通えそうか?」
自分の外見をとやかく言わず、微笑んで父親がそう訊いてくれた。
「仕方ないじゃん。やっと髪の色を許可してくれた高校なんだからさ」
少年も微笑んだ。
肉親といることだけが、安心できる場所だった。
物心ついた時から周りに囁かれ、金色の髪を黒くしようにも受け付けず…更に、胃痛により食べることを嫌いになって余計に肥えていく体を…自分自身を呪った。
また、周りに嫌悪し…恐れ、人間不信に陥ってしまっていた。
「腹減らないか?」
「…いらない…。むしろ、吐きそう…」
そんな調子で、食事を抜くことは毎日で…貧血で倒れやすい体質に仕上がってしまった。
母親が肩を支えてくれ、父親が運転する車に乗り込んだ少年は、改めて窓から高校を見つめる。
(…仕方ないんだ…)
新たな気持ち…意欲が湧かないまま、少年はまたうつ
向いた。