永遠の存在
□変装上等:中編(全46ページ)
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深夜二時頃まで、それはかかった。
ずっと走り回っていた悟史と清水は力尽き、休憩室のソファーへ身を横たえ、無言のまま疲労に伏していた。
数刻経ち部屋へ訪れた三浦は、トレイに変わった色の飲み物を乗せて、二人に笑いかける。
「お前ら、頑張ったな。客も感心してたぞ。俺も助かったぜ」
言いながら、二人に持って来た飲み物を手渡す。
「コレ…昨日、三山が飲んでたものに似てる…」
オレンジともピンクともつかない不思議な色のそれを見て呟き、清水はグラスに口をつけた。
「ピーチチェリーっていう、俺のオリジナルだ。こういう場が好きだけど、酒は飲めないっつー客もいるからな」
「マスターと初めて会った時も、コレだったよな…。味、変わってない…」
ほのかに甘酸っぱく、すっきりとした喉越しを楽しみ、また懐かしみながら、悟史は笑みをこぼす。
「ふぅん…。こんなに美味しいものなら、毎日でも飲みたいな」
「言ってくれるぜ」
煙草を口にくわえた三浦は、清水の頭を撫でた。
「ああ、マスター。俺らの部屋は?」
「二階の奥だ。用意はしてあるからな」
三浦の好意で、二人は店で下宿することになっていた。
「足りねぇ物は好きに買い足して構わねえからな」
「サンキュー、マスター。けど、俺ら…金ないぞ」
「バァカ。だからここにいんだろうがよ。店の雑費に回すから、遠慮すんな」
煙草に火をつけ「ゆっくり休めよ」と言い残して退室する三浦に、口々に礼を言う二人は飲み終えたグラスを片付け、言われた部屋へと向かった。
小さな冷蔵庫と小さなテーブル、給湯機まで備わっているその個室は、まるで民宿のような心地良さを感じさせた。
「うわぁ…なんか嬉しいな。頑張ったかいがあったよ」
未だにウェイター姿の二人はスーツを脱いで、さっそうと寝所の準備をする。
「ふあぁ…。何時に起きるかな…」
大きなあくびをし、背伸びした悟史は携帯を手にした。
「七時でいいんじゃないの?幸い駅まで近いんだし…」
「ん…じゃ、七時…と」
二人はあくびをしつつも入浴だけは済ませ、布団へ潜った。
ものの数秒の後、二人共が寝息をたて始めた。