永遠の存在

□教員宿泊研修(全43ページ)
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「昨年は最悪でした。木の皮で布団を作ったり、葉っぱでテントを建てたり…」


毒を吐くように、山口は罵る。


(…一体、何があったんだ…?)


野杉は瞬時に青ざめた。


「言っておくが、今年はバカンスだぞ」


教頭の一言に、全員が互いの顔を見合わせる。


「バカンス…ですか」


胡散臭いな…と、山口は思った。


「海は青く、背には青々と木々が潮風に揺れて…心地よい音を運ぶ」


教頭の語りを聞いていた一同は、想像する。


「木造のコテージに、トイレは水洗。珍しい果実が実り、海岸の全てが星の砂…」


(水洗のトイレ…)


桃井は、昨年の事を思い出してうっとりする。


(木造のコテージ…)


稲瀬は、昨年の事を思い出して安心した。


「またそんな…」


山口は溜め息をついて、野杉の耳元で口を開く。


「期待しない方が良いぞ」
「大いに期待して良いぞ」


両側から、山口と教頭に吹き込まれた野杉はオロオロするばかり。


「では、出発は明日の六時とする。遅刻をせぬようにな」


言って、教頭は職員室を出た。


「…作戦会議だ」


山口が書類をテーブルに広げた。


「昨年、熱病にかかった方がいらっしゃったでしょう?念の為に、新谷先生を同行させましょう」


稲瀬が言ったが…野杉は挙手する。


「保健医は家族旅行中だと聞きましたが?」


「確か、昨年も…。パターンが同じなんて、普段はのんびりしているのに、新谷先生…鋭い人だ」


山口は溜め息をつく。


「外部の人間なら、アテが…」


野杉は早速、携帯を手に通話を試みた。
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