‡参之巻‡
□知りたかったのは
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シカマルの余りの必死さに半ば押され気味に返事をしたナルトは、何故そんなに彼が必死なのか違和感を覚えながらも指示通り殺気をしまい込んだ。
このときシカマルが人知れず冷や汗を拭った事は、誰も知らない。
「おーいお前ら任務始めるよー!」
いつの間にか立ち直っていたカカシから聞こえた任務開始の合図。
それを聞いた途端にナルトは今まで纏っていた一切の気をスッと断ち切り
「はーい!今行くってばよー!!」
皆の知っているドベのうずまきナルトとして元気よくカカシ達の元へと走る。
…相変わらず完璧な変わりっぷりだなぁおい。
流石は木の葉の暗部最強とでも言うべきか。
ナルトの見事なまでの変わりように心の中で拍手を送りつつ、シカマルもナルトの後に続いてカカシ達の方へ向かうべくこの場を後にした。
***
「それじゃあ何人かに分かれて草抜き始めー」
あ、言っとくけどサスケの火遁で一面焼け野原…なんてのはNGだからな?綱手様の庭で火事でも起こそうものなら間違いなく皆殺しだろうし。
くれぐれも自分の手でやるように、というカカシの警告と共に任務が開始された。
「それじゃあサスケ君は私と組みましょーvv」
言っていのはサスケの腕をがっちり掴んで離さない。
「何言ってんのよいの!サスケ君は私と組むってきまってんのよ!」
いのの明らかな挑発にサクラも負けじと反対側の腕を掴みぐいぐいと引っ張った。
どうしても一緒のグループに成りたいらしい。
「…………」
二人からの挟み撃ちのに合い、サスケは身動きが取れず絶好調に不機嫌だ。
(アイツも毎度毎度大変だなぁ…いのの奴も大概にしてやればいいのに)
サスケの哀れな姿を見て僅かに同情を向けたものの、決していのに止めるように言う訳でもなく。
「そいじゃあシカマル行くってばよー!!」
ナルトは気にせずにシカマルと草抜きのために庭の奥へと進んで行った。
――アイツらそんなに仲良かったのか…?
自分を挟んでいがみ合っている少女達には見向きもせずに、サスケは先程奥へ行った二人の事を思い出していた。
確かに二人はアカデミーの頃から仲が良かった。
キバも含めてよく3馬鹿だの何だのと言われていたのも知ってる。けれど――
あの二人には何か特別な繋がり、というか、よくは分からないが何となく他とは違う何かがある気がする。
さっきだって声こそしなかったが確かに二人は何かの会話をしていた。目線はしっかりと追えたからちゃんと分かる。
――そして僅かに感じた殺気。
それは背筋が凍ってしまうような、そんな強大なモノだった。
それをナルトが放ったというのか…?
そんなことあるはずがない。ありえない。
あれは高が下忍が放てるようなもんじゃなかった。
それこそ以前会った大蛇口丸のような…いや、アイツなど比じゃない程だ。
. . . . .
そんなものをあのナルトが放てるとは到底思えなかった。あのドベのナルトが…
しかし現実はこうだ。
確かに殺気はナルトから発せられたもの。偶然見てしまった、カカシに向けられた何時もの太陽のような笑みではない、冷めた笑み。
あぁ、考えれば考える程分からなくなる。
俺が昨日までアイツに見ていたものは
一体何だったんだろうな―…?
何か見落としていたいたものに気付いたような、けれど何一つ確信めいたものがないこの状況で、サスケは只管あの金の髪の少年の事ばかり考えていた。