‡参之巻‡

□黒蜜
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他人を演じきる覚悟だってあったし。


(それしか方法がなかったから)


暗殺という名目の任務だって快く受けたし。


(強くなくてはならなかったから)


それでも。

直前になって怖くなった。逃げたくなった。



逃げられなかった。


『こちら四班、任務完了です』

『了解。直ちに本部へ帰還しろ』


無線にむかって報告をする班員の声でやっと意識がはっきりして。

それまでは夢中になって人を殺していたのだ、と。

そう思う事で抱く自分への恐怖。


怖い なんて感情がまだ自分にもあったのかと、驚いたけれど。
そんな風に思ってみてもやっぱり怖くて。

だって 人を殺したんだ。


「これで俺も 本物のバケモノ、か‥」


返り血で真っ赤に染まった手を見ては そう思わざるを得なかった。




これが 暗部の任務。

火影直属のエリート部隊と云われる組織の 本当の姿。


「呑み込まれるなよ」


この仕事で 自分を見失うな。

そんな警告を受けたってどうしようもなくて。


押し潰されてしまいそう。

気を違えてしまいそう。


いっそ狂った方が楽だ。

呑み込んでくれたなら。

それならもう何も考えずに済むから、

だから、
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