‡参之巻‡
□黒蜜
4ページ/5ページ
楽にして―…
「‥ナルト?」
「あ?あぁ‥何」
「エイの居場所、知りたいんだろ」
「知ってるのか?」
「おう」
多分 慰霊碑だ。
アイツの両親が眠る あの場所。
彼らは殉職した訳ではなかったけれど 五代目の配慮でひっそりと彼の名を刻まれているから。
「多分あそこで風車でも眺めてんじゃねぇの?」
「‥そうか」
分かった、と。
言ってナルトは静かにその場を後にする。
その際 持っていた報告書は未記入のまま手渡した。
「おい、これ‥」
「シカマル 後は任せた」
「は?!おい待‥」
バタン、
閉められた扉に遮られて言葉は最後まで紡がれる事なく、シカマルは一人手渡されたそれを握り締めたまま立ち尽くす。
「‥本当、エイの事気に掛けてんだな。総隊長殿は」
いのとサスケの奴が見たら 一体どんな顔をするか。
不憫だな、と心の中だけで呟いて 彼の優秀な部下は報告書の作成にとりかかった。
何度も呑み込まれそうになった。
ドロリ、と。黒い何かに包まれる感覚。
素直に呑まれてしまえばきっと楽だったろう。
自我を捨ててしまえばもう、待っているのは人殺しという快感だけで。
言うなれば それは多分 甘い蜜。
ただ少し違うのは 甘いだけではないという事。
味わってしまえば最後 もう二度と後には引けない。