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□愚者の楽園へ 10-12
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愚者の楽園へ 11


 |ゼリー・フィッシュ|03|
 :jerry fish

 

  [teller]
  ⇒ YAMAZAKI












夭逝する宿業に
未来を与えたのは、
侵略者の
医療技術だった。


死に至る病とされてた、 結核・破傷風・儡・天然痘・コレラ・赤痢……あらゆる不治を根治させる技術は、 解体新書止まりのこの国には無かった。





蒼空に刺さる巨大ターミナル建設を始め、 未来都市への急速な開発が施されたのは極限られたエリア、 つまり江戸周辺だけだ。 文明と自然の調和が大事だと、 自国の星の科学汚染で学習して来てる一部の天人さん達は、 自然保護ってのが面白ぇ程に大好きだ。

一時、 品川の海苔が排水塗れになって揉めたりしたけど、 今は元通り。 湾を仕切る堤防の改良で新工場区の汚染された海水が外海に逆流する事も無くなった。


町民の中には、 自然なんてもンは侵略者が科学文明を持ち込む以前は、 意識して保護する必要の無い、 有って当たり前の物だったと考える人も居るみてえだけど、 そりゃ甘い。 昔から人口密度の高かったこの街に張り巡らされた水路では、 門戸開放前から生活廃水に依る深刻な水質汚染が始まっていた。

ソレ迄は自然を特別気にしてなかっただけだ。 その気にしなさと来たら、 コレラで死んだ大量の遺体をそのまま川に流しちまってたくらいで。 幾ら何でも任せっ放し過ぎっスよ、 自然に。


Neo-Edo-Cityの大開発の時に、 江戸情緒を気に入った天人さん達が水路埋め立てに反対し、 地下に水質浄化装置を設置したお陰で、 江戸風情の町並みが残り、 今の観光産業が成り立ってるとも言える。



俺らがまだ
生まれてない
昔のあの日

この国に起こった
晴天霹靂の大事件


真っ先に白旗を掲げ、 天人に契合した幕府が、 そんなに悪い選択したとは今時の若い奴らの大半以上が思っちゃナイ。

返って、 『町民への攻撃を危惧し、 人命を尊重した決断にはプライドを持つべき。 侍の衿恃だけを重視する政策をトップ自ら訂正したのは恥じゃない』とか『もし自分が当時の将軍だったら、 一発目の攻撃を受ける前に降参する』『江戸が堕ちなかったら、 尾張辺りが先に天人と手を組んで、 今頃尾張名古屋が未来都市化し、 首都交代してるだけで結果は変わらない』…色んな肯定論も聞く。

俺達は攘夷戦争を経験してないし、 最近はフラワーの暴走ばっかを目にしてっから、 まぁ仕方が無いって気もするし。









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photo:
Louis XIV
*sunx

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