⊂stories⊃

□愚者の楽園へ 01-06
16ページ/29ページ

愚者の楽園へ 04


 |ゴットファザー|01|
 :god father

 

  [teller]
  ⇒ YAMAZAKI












GOOD FATHER =
名付け親


名付け親、 誰だろ
名称が在れば
ネーミングした誰かが
必ず存在する
宇宙中皆の名前に
俺にも


自分の名の由来を俺は知らない。 極めて珍しいセンスなのに。 幼年期には子供心に語意の悲愴感から、 出生に纏わる後ろ暗い事情をドラマ(←子供の憧れ)仕立てに(勝手に)読み取り親に問うのも忍びなく…

そんなセンシティブな時期が過ぎると雑多な興味に目を奪われ、 命名の謎はランク落ちの上忘却。 追ぞ食卓の話題に上らぬ儘に両親とも他界した。


名前を
誉められた




以前父の病院の結核病棟に入院していた子供と、 たまたま良く似た“子”に就職先で会った。 その子供は天人製新薬のお陰で一週間も入院してなかったし名前も覚えてなかったが、 外見の特徴が印象深かったんで話を振ってみると案の定本人だった。



その子の名は
世間に知れてた

ネームバリューは絶大

そのブランド
イメージが

任務の成功:失敗
同僚の生:死

の境界を確実に
引き揚げた



彼の名前にはいつも
枕詞が付いて来た


“οοοο”



俺も始めに彼に抱いた先行意識──特異な職種とその形形(カタチナリ) からフィーチャーされた、 世俗から遠い血の通わないイメージ──は、 幾度と会話を交わす毎にペリッペリ剥がれた。

普通に笑う、 酒飲みで音楽好きの、 実はかなりガサツで稀に知性を疑う事をやらかす奴の生き様は……失礼だけど、 毎日面白い。 それでも意外に実年齢よりずっと眼界の開けた奴で、 俺のが年上だけど今では同級生ノリで蔓んでる。



そいつに
名前を言ったら
誉められた





俺の名前を誉めた彼の名に、 引っ付いて来る肩書きに、 本人よりも俺の方が悲しかったりもする。



“ケンゴウ”
“スゴウデ”



“バクフノイヌ”



“ヒトゴロシ”



“シニガミ”



“ヒトキリ”
 


こんなのよりもっとずっとアンチモラルな修飾詞を沢山持ってる彼の名字は『オキタ』と言う。







 血溜りに

 豪紗な隊服を着た
 子供の人形が

 直立してる





充分、 薄気味悪い映像が網膜に染み付くだろう。
ただ、 現場に立ってるだけで。 実際に打刀を抜いた処等見てなくても。


実際に彼が刀を奮う現場を見た者なら、 殺人鬼等連想する訳が無い。









 ある日俺は
“ヒトキリ オキタ”
 に話し掛けた

 名前を教えた










¨

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ